2020 Fiscal Year Research-status Report
Judicial Appraisal of Unlisted Shares
Project/Area Number |
20K01373
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
星 明男 学習院大学, 国際社会科学部, 准教授 (10334294)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 複数議決権株式 / サンセット |
Outline of Annual Research Achievements |
上場直前の非公開株式価値評価の研究から派生して、本年度は、複数議決権株式を用いた上場制度の研究を中心に行った。複数議決権株式を用いた上場制度の検討は、米国で敵対的企業買収が盛んであった1980年代後半から90年代前半にかけて活発に行われた。当時は、一株一議決権原則から乖離し、特定の支配株主に会社支配権を集中させる株式保有構造(DCS構造)を認めることがそもそも望ましいかどうかという「静態的」な議論が中心であったが、これに対して、近時の議論は、DCS構造による株式上場を認めることは前提とした上で、どのような場合にDCS構造を解除(一株一議決権構造に転換)させることが望ましいかという「動態的」な議論に焦点が移ってきている。その背景には、GoogleやFacebookを典型に、米国でDCS構造による上場を選択する企業が飛躍的に増加したという事情があるが、米国外でも、アジアの有力な証券取引所(香港やシンガポール)が、自国での新規上場を勧誘するために、2010年代後半から複数議決権株式を用いた上場制度の整備を進め、有望な新興企業にとってDCS構造による上場の選択肢が増えてきているという事情もある。もっとも、DCS構造の解除(サンセット)に対する姿勢には各国で差があり、米国の証券取引所(NYSEやNASDAQ)がサンセットに特段の制約を設けていないのに対し、アジアの証券取引所は、一定の事象(複数議決権株式保有者の死亡や取締役からの退職など)が発生した場合には、サンセットを義務付けている。英国は、2021年3月公表の上場制度整備に関する報告書(Hill's Review)の中で、5年間経過後の自動的なサンセットを提案している。 このようなサンセットに関する議論状況を踏まえ、特に東京証券取引所の経験から英国の自動サンセットを批判的に検討するペーパーを準備している。2021年9月開催予定のASLI Conferenceに報告を申請し、審査結果を待っているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者は2020年9月から英国にて在外研究中であるが、渡航前は、新型コロナウイルス感染拡大によって、在外研究の実施可否に大きな不確実性が生じ、学内外の調整に多大な時間と労力を費やすことになった。また、英国渡航後は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための英国政府の方針等(滞在中2回の全国的なロックダウンを含む)により、受入先であるケンブリッジ大学での設備利用・研究活動に大幅な制約が生じた。 また、例年5月~6月頃に開催されているASLI Conferenceの開催が、前年度の新型コロナウイルス感染拡大に伴う開催延期の影響を受け、2021年度も9月に後ろ倒しになったため、同Conferenceでの研究報告の予定も遅れることになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、2021年9月開催予定のASLI Conferenceに報告を申請したペーパーを完成させ、同Conferenceでの報告が承認されれば、報告を行う。これと平行して、来年度中は、現行制度下の裁判官による非公開株式の評価に代替し得る非上場株式の価格決定制度の検討を続ける。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、参加を予定していた学会等が延期・中止・オンライン開催になることにより、それらに使用する予定であった旅費の使用がなくなった。次年度使用額は、主として延期になった学会等への参加のために使用する予定であるが、本報告書提出日現在、パンデミックが終息していないため、参加する学会等の具体的な見通しは立っていない。
|