2023 Fiscal Year Annual Research Report
Intermediated Shares: The Risk Assessment and the Effectiveness of FinTech
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20K01377
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
上田 純子 愛知大学, 法務研究科, 教授 (40267894)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノベーション / フィンテック / 振替株式 / 電子的株主権に伴う静的・動的リスク / 比較法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、文献研究により株式振替決済時におけるリスクおよび株式振替決済後に生じるリスク、すなわち、直上のカストディアンまたは中間層に介在するカストディアンの過失や支払不能等に起因する法的リスクを踏まえ、長らく控えていた海外渡航による現地調査において、フィンテックに関する最近の進展およびフィンテックを活用することによるリスク低減の可能性について情報収集に努めた。 基本的に、カストディ・チェインを巡る法的リスクは、決済システムの構造・機能(技術的側面を含む)や適用される法制度(契約法や破産法等の関係法令が多層保有構造の利害関係者保護に資する程度)によって変動しうる。最終保有者は、複層的に介在するカストディアンのどの層に対しても契約法上の請求権を有するような法解釈が必要と考えるが、そのような法理論的アプローチに加え、フィンテックを用いた株式振替決済システムの簡素化によるカストディアンの主観的事情に左右されない法律関係を構築することも目指されるべきである。 株式取引アプリケーションの開発は、フィンテックにおけるイノベーションにおいてもとりわけ顕著である。新たなプラットフォーム・システムは、株式取引当事者、口座振替機関、振替機関等の決済ループにおける多階層保有に伴う法的リスクの低減にも資すると考えられる。株式振替決済に加え、国際的株式保有における常任代理制度のようないわば強制的多階層保有については、単層保有化は困難であると考えざるを得ないため、とりわけ、プラットフォーム・システム化によるリスク低減の必要性・有効性は高いと考えられる。2023年度には、ベルギーのブリュッセル自由大学において、実質株主開示規制に関する国際ワークショップに参画する機会を得た。カストディアンの介在による株式間接保有に伴う不可避的問題であるゆえ、この観点からも成果公表に向け準備している。
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