2020 Fiscal Year Research-status Report
The research for the interdependence of tort law and insurance
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20K01378
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
前田 太朗 中央大学, 法務研究科, 准教授 (20581672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自動車事故 / 不法行為法 / 危険責任 / 自賠法 / ドイツ法 / オーストリア法 / 保険法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナウィルスの影響もあり、ドイツ・オーストリアへ渡航し、現地研究者との交流をおこなうことができなかった。そこで、①1資料の収集・分析と②一部成果の公表ないし公表のための準備作業に重点を置いた。 ①に関しては、ドイツでは、本研究課題に関連する自動車の運行概念について、一部学説及び下級審から厳しい批判が向けられていたものの、引き続き従来の判例の立場を堅持することを確認しており、EUレベルにおいても、自動車保険に関して広い運行概念を示す傾向にあることを、資料の分析を通じて確認している。このことは、責任賦課のレベルと責任確保のレベルでなるべく平仄を合わせようとする意識が潜在的にあることをうかがわせる。またより総論レベルで、保険制度と不法行為法の関係に関して、おもに自動車保険に関するコンメンタールや論文集を分析し、多様な理解があることを確認した。 また②については、オーストリアの自動車運行概念について、オーストリアの最高裁判所の判例変更に影響を与えたMartin Spitzer教授の論文の翻訳を交換することができたことが大きい。教授は、本研究課題の中心である分離原則について、これを堅持する立場であって、責任保険制度が充実する自動車事故においてでさえこうした立場をとることは、総論的にも、保険制度と不法行為法との関係を考えるうえで無視することはできない。また2021年度には、これまでの成果として、自動車の運行概念に関する比較法研究を中心とした論考を公刊する予定であり、その準備作業として、2回の研究会報告と、論稿の執筆作業をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルスの影響もあり、ドイツ・オーストリアでの研究者へのインタビューはできなかった。また勤務校が変わり、かつコロナウィルスの影響により講義形態が、大きく変わったため、研究時間をとることが難しくなり、当初の研究計画からの修正を余儀なくされた。2020年度は、総論的な検討として、保障スキームと責任賦課スキームの関係性を検討する予定であったが、資料収集にとどまり、分析・検討を進めることはできなかった。研究を取り巻く環境が一変したこともあり、むしろある程度研究が進んでいた自動車事故に関する研究に重点を置き、概要に示したように一定の研究成果を得ることができた。ここでは、各論的な検討ではあるが、各国とも、責任保険制度が充実する状況にあって、責任保険と責任賦課の関係を機能的比較を一番行いやすいのが自動車事故の領域であると考えられ、ここでの検討は相当に一般性を持つものといえる。そのため、当初の研究計画とは順番が異なるが、各論的な検討をしつつ、総論的な検討も視野に置くことができたともいえ、総合的にみると、おおむね順調に研究は進んでいるといえる。 また2020年度は、概要にも示したように、Spitzer教授の論文の翻訳を公表することができ、さらに、自動車事故に着目した論文の公表を同年度に準備し、2021年度早々に公表できることからも、本研究課題として、2020年度は、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は前年度に引き続き、自動車事故の責任賦課と保険の関係について、資料の分析を進め、公表作業をおこなう。これと並行して、総論的に、保障スキームと責任賦課スキームの関係についても検討を深めていきたい。あわせて別の各論として、衡平責任及び過失責任についても、日本では重要性を増していることから、検討を深めていきたい。 2021年度も引き続きコロナウィルスの影響が懸念される。しかし、ドイツ及びオーストリアはデータベース上のオンライン資料が相当に充実しており、資料収集はそこまで困る状況にはないと考えられる(勤務校で契約するデータベースに加えて、必要なデータベースも契約することも視野に置いている)。さらに、オンライン会議システムも充実してきたことから、可能であれば、通訳も含めてドイツ及びオーストリアの研究者とのオンラインでのインタビューも試みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響もあり、国外はおろか国内の研究会がすべてオンラインとなり、本来旅費として支出を要する費用が全て執行できなかったことが原因と考えられる。2021年度以降も同様の状況は改善されないと考えられ、本来海外で資料集するするはずだったものは、データベースを契約することで相当数カバーできると考えられるため、そうした費用にあてることを考えている。
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