2021 Fiscal Year Research-status Report
The research for the interdependence of tort law and insurance
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20K01378
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
前田 太朗 中央大学, 法務研究科, 准教授 (20581672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 危険責任 / AI(人工知能) / 過失責任 / 責任保険制度 / ドイツ法 / オーストリア法 / EU法 |
Outline of Annual Research Achievements |
①研究の進捗状況 2020年度に引続き、2021年度は、基礎的文献の収集および分析を継続した。 ・AI関連 EUレベルでの、AIに対する民事責任提案が示され、そこでは危険性の高いAIとそうではないAIを区別し、前者には無過失責任、後者には過失責任を根拠とする損害賠償スキームの提案がなされている。いずれについても、保険制度との関係を考慮することなしでは、成り立たないものと考えられ、これに関する議論の活発化の萌芽がみられた。また責任主体についても、「電子人」を責任主体とはしない方向性が示され、AIに関する民事責任主体論についてもこの方向性での議論が進むものと考えられる。 ・自動車事故関連 より各論レベルにおいて、自動車保険に関して、欧州司法裁判所の近時までの展開を負い、それとドイツ法及びオーストリア法の現在の到達点の対比に関して、研究を進めた。欧州司法裁判所は、2009年のEU指令の解釈に関して、一貫した法形成を示しており、これと民事責任との関係につき、EU構成国であるドイツ法及びオーストリア法は、慎重な対応を示そうとしている状況にあるといえる。これは、民事責任と保険制度の関係を考えるうえで格好の素材であり、EUレベルでの展開と、それをうけた構成国への影響を、引き続き見ていきたいと考えている。 ②本研究課題の成果の公刊状況 自動車事故と保険制度の関係及び民事責任、特に民法典に置かれる不法行為規定の解釈論の整理について、それぞれ勤務校の紀要に提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①研究課題全般に関する進捗状況 コロナ禍の影響で、当初予定していたドイツ及びオーストリアへの渡航は引き続き難しい状況であった。その一方で、データーベースの充実もあり、必要な文献収集が捗り、分析・検討も一定程度進めることができた。 ②成果の公表状況 本研究課題の一部成果として、自動車事故と保険制度の関係を論じる論文の連載を開始することができ、日本法の問題意識の部分を公開することができた。また、申請者の従前の比較法の研究成果を踏まえて、日本法の民事責任、特に民法典におかる不法行為規定の解釈の整理についても公刊することができた。 以上を踏まえると、本研究課題における進捗状況は、おおむね順調なものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
① 総論レベル 民事責任法と保険制度の関係につき、引き続き分析を進めていきたい。とくに22年度は、歴史的な経緯そして社会保障制度との関係も含めて、ドイツ法及びオーストリア法を参考にして、分析・検討を進めていきたい。 ② 各論レベル①自動車事故と保険制度の関係 連載を開始しており、特に比較法的検討を進めていきたい。またEUレベルの展開については、個別に取り上げて、公刊できるように検討を詰めていきたい。 ③ 各論レベル②その他領域 AI技術及び衡平責任の問題について、近時の日本法の議論を含めて、比較法研究に示唆を受けて、進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究課題申請当時の想定と異なり、外国出張・国内出張ができなくなったため、次年度使用額が発生した。 今年度こうした状況が改善するのであれば、海外・国内の出張を再開させたい。 これに対し今年度も状況が改善しないようであれば、文献収集の必要性から、データーベースの契約も考えている。
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