2022 Fiscal Year Research-status Report
The research for the interdependence of tort law and insurance
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20K01378
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
前田 太朗 中央大学, 法務研究科, 准教授 (20581672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 危険責任 / 自動車保有者の責任 / 責任保険 / 任意保険 / ドイツ法 / オーストリア法 / AI 人工知能 / ヨーロッパ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
22年度は、研究計画調書に沿った形で、a衡平責任とb自動車保有者責任の検討を進めた。 aについて、ドイツ及びオーストリアの親権者責任との比較をしながら、基本文献の検討と分析をおこなった。両国とも、衡平責任は最終的な救済と考えている一方で、責任判断に保険制度の有無が影響を与えるか、という分離原則について、責任保険か、任意保険かに応じて、扱いを異にするか、同じように考えるかで、対応の差がみられる。その差が、実際上の理由なのか、理論的な理由なのかは、これから分析を進める中で明らかにしたいが、この差があることに着目することで、衡平責任と分離原則の関係性の検討を深めることができると考えている。 bについて、ドイツでは、AIによる技術革新等の対応のため、自動車保有者等の責任を定める道路交通法の改正が近時行われている。従来は速度の遅い自動車を同法の対応外としていたものの、この改正により、完全自動運転の場合には速度を問わず、危険責任が課されることとなった。しかし技術革新により速度が遅いものの、しばしば用いられるようになる電動スクーターは同法の規律対象外となっており、保険での対応も問題となっていることから、この問題に対する理論上・立法上の対応が迫られている。このように、近時学説での議論が活発化し、ドイツ交通法曹大会verkehrsgerichtstagでも一つのテーマとなっている。自動車の危険責任はいったいどのような危険に対応するものか、という基本的な理解に関する議論がみられており、自動車の有する多様化する危険性をどう危険責任で規律するか、という本研究課題の一つの重要な課題に対する適切な検討素材と考え、分析・検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公務等の関係で、研究時間の確保に苦労したが、資料の分析検討は、順調に進められたと考えている。 その一方で、文献調査ではやや不十分なのは、ドイツ・オーストリアの現地で研究者にインタビューをして知見を深める必要もあると考えており、これについては、令和5年度において、積極的に進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題最終年度となり、これまでの成果を踏まえつつ具体的にまとめる作業をすすめていきたい。自動車保有者責任については、ドイツ、オーストリアの判例・学説の展開状況をまとめ、紀要等で順次公刊していく予定である。 また衡平責任についても、同様に公刊を進めていきたい コロナ感染状況にも左右されるが、本研究課題を開始して以降、当初予定していた現地の研究者へのインタビューが全くできていない状況にある。令和5年度は、積極的にこのことを進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請当時想定しまた昨年度当初想定していた海外出張が思うように計画できず、その旅費の支出が抑えられたため、次年度使用額が生じたものと考えられる。 今年度は積極的に現地調査を行いたいと考えている。
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Research Products
(1 results)