2020 Fiscal Year Research-status Report
Treat Labor Contracts in Procedures of rescuing the Company established by the Insolvency Law
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20K01385
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
上江洲 純子 沖縄国際大学, 法学部, 教授 (60389608)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 再建型倒産手続 / 剰員整理解雇 / オーストラリア / 任意管理手続 / フェア・ワーク法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「倒産労働法」分野に倒産法領域からアプローチするものであり、その目的は、イギリス・オーストラリアの法制等を手掛かりにして、日本の再建型倒産手続における労働契約の処遇の在り方を探ることを目的としてスタートした。研究初年度である2020年度は、①日本の議論の状況を再整理し、イギリスの法制・判例につき最新の状況を確認すること、②オーストラリア法制・判例の基礎資料の収集を行うこと、③オーストラリア現地において研究者・倒産実務家を中心にインタビュー調査等を実施することを予定していた。 まず①については、ある程度先行研究実績を有していたことから、日本については既存のデータベース、イギリスについては本研究のために新たに契約したデータベースを活用して、不足している資料の収集や情報のアップデートを行った。それにより、イギリスにおける新倒産法の制定経緯を確認することができた。 次に②については、関連書籍の購入やデータベース調査等により基礎資料の収集に努めた。その結果、オーストラリアにおいても近時倒産法分野の重要改正が相次いで行われていること、中でも注目すべきは、2020年末の法改正により、中小企業の事業再生を円滑に行うことを目的としてDIP型の再建型倒産手続が新設されていることを把握したほか、再建型倒産手続における労働者の解雇と労働法の規律の関係性に関しては、日本の整理解雇法理の4つの考慮要素のうち2つに相当するルールが明文化されていることなどを確認することができた。 本来であればこれらの成果を踏まえて、③のオーストラリアにおける現地調査を実施する予定であったが、コロナ禍によりオーストラリアへの入国が認められない事態となったため、9月に計画していた調査を中止せざるを得なかった。 そのため初年度は、②を中心に取りまとめた成果を2021年3月に紀要にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により、オーストラリア現地調査の実施が不可能となったことから、研究課題の遂行に大幅な遅れが生じている状況にある。 研究代表者が、本研究以前に進めてきた先行研究の実績はイギリスを中心としたものであったため、本研究の最大の特徴は、日本やイギリスの比較対象としてオーストラリアを新たに追加し、倒産法・労働法の改正動向や議論状況を探るために現地調査を敢行することにあった。しかし、コロナ禍でその調査を断念せざるを得ず、情報収集手段が書籍やデータベース等に限定されてしまい、研究者や倒産実務家の方から大きな法改正の前後の議論状況について機を逃さず直に情報を得る貴重な機会を失ってしまった。加えて、当初の計画では、研究初年度にオーストラリア、その次の年度にイギリスにて調査を行う予定でいたが、初年度のオーストラリア調査を中止したことに伴い、これを踏まえて行う予定であったイギリス調査の計画も見直さざるを得ない状況にある。さらに、現下のコロナ禍の状況に鑑みて、現地調査の実施時期については慎重に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究初年度に実施できなかったオーストラリア調査について、コロナ禍の状況も踏まえつつ、その実現を模索するとともに、オーストラリア調査結果を分析した上で実施する予定であったイギリス調査の実施時期の見直しを検討するほか、長引くコロナ禍の影響でこれらの現地調査が実施できなくなった場合の代替手法についても勘案しながら、研究を進めていく。 研究2年目は、引き続き日英豪の最新の資料収集に努める。イギリスについては、ブレグジット後、新倒産法施行後の倒産事件の動向を把握するとともに、倒産労働法分野への影響を確認する。オーストラリアについては、倒産労働法分野の判例・学説について資料収集を継続しつつ、新倒産手続導入後の倒産事件の動向や労働法における議論状況を確認する。これらを踏まえて、イギリス・オーストラリアの法制・判例・学説を比較分析し、同様の法制度を採用しているにもかかわらず、再建型倒産手続における解雇の判断基準が同一ではない理由を探求し、研究会や紀要等を通して研究成果を公表していく。 最終的には、当初の計画通り、再建型倒産手続における労働契約の処遇の在り方を探求し、管財人等が解雇を行う際に適正に機能する判断基準の確立を目指して研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、コロナ禍によりオーストラリア現地調査や研究進捗状況報告のための研究会出張が実施できなかったことにより、旅費が全く発生しなかったこと、そのためこれに要する謝金なども一切発生しなかったことにある。加えて、オーストラリア調査に合わせて購入する予定であったモバイルPC等の物品費が発生しなかったこと、基礎資料調査のために導入する予定であったイギリス法・オーストラリア法関連データベースのうち、オーストラリア法関連の基礎資料調査については、現地調査が中止になったことを受けて、まずは関連書籍の購入や既存のデータベース調査からスタートさせることにしたため、研究初年度はイギリス法データベースへの支出分のみにとどまったことも影響している。 2021年度については、オーストラリア現地調査や国内出張が実施可能となれば、国内外の調査による旅費・謝金などの支出が大幅に増えるほか、調査のためのモバイルPC購入費やオーストラリア法関連データベースの新規契約などの支出も想定されることから、これらには未使用額を充てながら研究を遂行していく予定である。
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Research Products
(1 results)