2021 Fiscal Year Research-status Report
現代における「人の法」の構想――民事責任法の諸問題を起点として――
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20K01388
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
白石 友行 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (00571548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人 / 人の法 / 民事責任 / 損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、2021年度に引き続いて、①「人の多様性と画一性」、②「人」の実体と様々な属性、③「人」の現実性と仮定性、④「人」の始期と終期、⑤「人」とそれを取り巻く存在との関係という5つの視点から、民事責任法の諸問題における「人」の現れ方を分析し、それが現代法における「人」のあり方としてどのように評価されるべきものであるかを明らかにする研究に取り組んだ。 次に、 民事責任法の諸問題で現れる複合的な「人」に応えうる「人の法」を構築する前提として、フランスで展開されている「人の法」の基礎や本質をめぐる議論をそれ自体として分析し、それらの理論的意味や含意を明らかにする研究に着手した。この研究によって、個別の制度や事例等をそれ自体で検討するだけでなく、また、「人」のある側面を切り取って分析するだけでもなく、上記①から⑤までを踏まえ、「人」の捉え方の複合性に着目し、それぞれの観点の相互関連性をも意識しつつ、包括的な視点から「人の法」を構想していくことが可能になるものと期待される。 更に、2021年度に着手した、民事責任法以外の民事法および公法や刑事法、更に、諸学問分野における「人」がどのように捉えられているかを明らかにする研究に引き続き取り組んだ。これは、これらの各法領域や諸学問分野(AIと人をてがかりとした認知科学等や、行動経済学や行動心理学等)における「人」の捉え方と民事責任法上の諸問題の検討を通じて明らかにされたあるべき「人」の捉え方との異同を分析し、その成果を「人の法」へと還元することを目的としており、上記①から⑤までの課題に応えうる「人の法」を構築するために欠くことのできない研究である。 最後に、これらの研究と並行して、現代的な個別問題との関連で「人」の捉え方や「人の法」がどのような意義を持つかについて考えるために、現代的な個別問題を分析する作業に取りかかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては、①民事責任法における「人」の現れ方を明確にする研究をほぼ終えることができた。また、②フランスで展開されている「人の法」の基礎や本質を分析する研究、③民事責任法以外の法分野や隣接学問分野における「人」の捉え方を解明する研究についても、一定の成果を得ることができた。確かに、②および③については、COVID19の拡大とそれに伴う研究環境の変化により、研究資料の利用や研究発表に関する制約があったため、研究に着手することができなかったり、十分に展開させることができなかったりした部分を残しているものの、これらの部分に関する研究の遅れは、他の部分(例えば、現代的な個別問題へのアプローチ)の研究を進めることによってカバーされている。これらの点を踏まえると、全体としては、「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2020年度および2021年度における①民事責任法の諸問題における「人」の現れ方についての研究の成果を前提として、2021年度に引き続き、②フランスで展開されている「人の法」の基礎や本質をめぐる議論を分析する研究、③民事責任法以外の法領域や諸学問分野における「人」の研究を進展させるとともに、④以上の研究の成果を現代的な個別問題へのアプローチに応用していく研究に着手する。また、①から③までの部分については、研究会等で報告し意見や批判を仰ぐほか、順次、論文として公表していきたい。
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Causes of Carryover |
〔理由〕当初は、資料収集と研究・調査のための旅費、および、資料の複写費を計上していたが、COVID19の拡大や緊急事態宣言の発令等により、これをほとんど実施することができなかった。また、当初は、持ち運び用のノートPCを購入するための費用を計上していたが、上記の理由により、移動して研究する機会がほとんどなくなったことから、これを支出しなかった。 〔使用計画〕COVID19が一定の範囲で終息すれば、資料収集と研究・調査のための出張をしたいと考えており、そのための旅費および複写費等として、また、その際に利用するノートPCを購入するための必要として支出する。
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[Book] 不法行為法研究②2021
Author(s)
新美育文他編(白石友行)
Total Pages
272(担当部分、111-148)
Publisher
成文堂
ISBN
9784792327736