2022 Fiscal Year Research-status Report
現代における「人の法」の構想――民事責任法の諸問題を起点として――
Project/Area Number |
20K01388
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白石 友行 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (00571548)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 人 / 人の法 / 民事責任 / 損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、2021年度に引き続いて、フランスで展開されている「人の法」の基礎や本質をめぐる議論を研究し、特に、法的な場面に登場する「人」について、どのような事案に着目し、どのような側面をとりあげ、どのような視点から捉えているのか、また、その成果をどのような形で法的な体系=「人の法」として構築しているのかといった点に注目して検討を行った。この研究によって、個別の制度や事例等をそれ自体で検討するだけでは不十分であることが再確認されるとともに、「人」の捉え方の複合性に着目し、それぞれの観点の相互関連性を意識しつつ、包括的な視点から「人の法」を構想していくための基礎が形成された。 また、2022年度も、前年度までに引き続いて、民事責任法以外の民事法および公法や刑事法、更に、諸学問分野における「人」がどのように捉えられているかを明らかにする研究に引き続き取り組んだ。本年度は、特に、(法)哲学、(法)社会学、行動科学等における「人」の多様な捉え方を解明するための研究を実施した。 更に、現代的な個別問題との関連で「人」の捉え方や「人の法」がどのような意義を持つかについて考えるために、現代的な個別問題を分析する作業を行った。2022年度は、特に、①LGBTQ等が提起する問題との関連におけるあるべき法的な「人」の捉え方、②SDGsに関わる様々な問題との関連におけるあるべき法的な「人」の捉え方、③AIとの対比、または、AIが浸透した社会におけるあるべき法的な「人」の捉え方、④複合的な被害をもたらした福島原発事故が提起する問題との関連におけるあるべき法的な「人」の捉え方、⑤生殖補助医療の普及と発展との関連におけるあるべき法的な「人」の捉え方について、裁判例や議論の状況の分析、前年度までに得られた「人」を法的に捉える際の複合的な視点、比較法的な分析等を踏まえて、検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度においては、①フランスで展開されている「人の法」の基礎や本質を分析する研究、②民事責任法以外の法分野や隣接学問分野における「人」の捉え方を解明する研究について、一定の成果を得ることができた。また、③現代的な個別問題を扱う研究に関しても、当初の想定どおりに進めることができた。2022年度より、本務校が変わり、研究環境と研究以外の業務の内容が変化したことで、これに対応するために多くの時間を費やす必要があったものの、新しく担当する授業の準備の過程で本研究に資する視点を獲得することができるなど、そこから得られたことも大きかった。これらの点を踏まえると、全体としては、「おおむね順調に進展している」と評価することができる
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2020年度から2022年度における①民事責任法の諸問題における「人」の現れ方についての研究、②フランスで展開されている「人の法」の基礎や本質をめぐる議論についての研究、③民事責任法以外の法領域や諸学問分野における「人」の研究を踏まえて、④これらの成果を「人の法」として提示するための研究、⑤現代的な個別問題へのアプローチに応用していく研究を行う。また、本研究全体の成果について、研究会等で報告し意見や批判を仰ぐほか、順次、論文として公表していきたい。
|
Causes of Carryover |
〔理由〕当初は、資料収集と研究・調査のための旅費、および、資料の複写費を計上していたが、本務校の変更やCOVID19の状況等により、これをほとんど実施することができなかった。また、当初は、持ち運び用のノートPCを購入するための費用を計上していたが、上記の理由により、移動して研究する機会がほとんどなくなったことから、これを支出しなかった。 〔使用計画〕COVID19の状況が変わり、本務校での業務に慣れてきたので、資料収集と研究・調査のための出張をしたいと考えており、そのための旅費および複写費等として、また、その際に利用するノートPCを購入するための必要として支出する。
|