2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K01394
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
名津井 吉裕 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 教授 (10340499)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 判決効の主観的範囲 / 権利能力なき社団 / 信義則 / 判決の遮断効 |
Outline of Annual Research Achievements |
「判批」『私法判例リマークス67号・2023[下]令和4年度判例評論』(日本評論社・2023年8月刊行)106~109頁では、当事者双方が権利能力なき社団であり、判例によれば社団構成員全員に権利が帰属するものとされるにもかかわらず、原告である社団が単独の共有持分権の確認を求めた請求について原審が請求を棄却したが、最高裁は社団を主体とする共有持分権の確認を構成員全員の帰属へと変更するように釈明せずに請求を棄却した点に釈明義務違反があるとして破棄差戻しをしている。釈明の問題はそのとおりであるとしても、原告社団の共有持分権確認請求の棄却の原審判断を支持している点については問題があることを指摘し、原告社団の構成員個人が訴訟において全く特定されないまま、社団を原告とする確認請求について本案判決をした場合には、誰が所有者であるかを判決主文で明らかにすることができない以上、既判力の及ぶ当事者も不明確となる。社団を訴訟担当者とする場合でも、この問題を無視することはできない以上、釈明によって示唆された請求の立て方をしても問題が解決するとは限らない以上、社団自身に当事者能力・当事者適格を認め、社団の確認請求が構成員全員への権利帰属でなければならないことを理由としては棄却されない解釈の必要性を説いた。 「信義則による後訴の遮断(最一小判昭和51・9・30)」『民事訴訟法判例百選〔第6版〕』(有斐閣・2023年9月30日発行)156~157頁では、実質において請求権競合が認められる事案において、一方の請求の棄却判決が確定した後、再び他方の請求を定立して訴えを提起した場合について、前訴判決の既判力ではなく、信義則により、前訴判決の既判力の範囲を超えた後訴請求を遮断した判例について、争点効理論の限界、判決の遮断効理論を検討した上で、本件事案の処理として判決効による処理が馴染まないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は、新型コロナ感染症の拡大対策が緩和されたことに対応し、大学においてもコロナ感染症に警戒しつつ、コロナ前の就学環境に戻すための対応が急ピッチで進められ、閣内業務が増大したこと、ハイブリッド型の授業から対面授業への移行への対応に追われたほか、父の介護などの家庭内の事情もあり、想定していたほど研究活動に専念することができなかった。年度末にはこうした新たな状況への対策も整いつつあるため、研究期間を延長したうえで、次年度にとりまとめを行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で普及したオンライン会議システム等のオンライン・ツールの活用により、移動なしに研究面での交流をする体制が整ってきており、引き続き新しいツールを用いて研究の進展を図りたい。
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Causes of Carryover |
期間延長をしたため。
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