2021 Fiscal Year Research-status Report
死因処分の目的財産と目的財産由来利益に対する相続債権者の地位に関する民事法的規律
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20K01395
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩藤 美智子 岡山大学, 法務学域, 教授 (70324564)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 相続財産の清算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、相続財産の清算制度についての研究として、まず、アメリカ法における検認手続(プロベート)、夫婦共有財産制を採用するカリフォルニア州における、相続手続きについて調査した。次に、フランス法における一方配偶者の死亡時の夫婦共有財産の清算手続きについて調査した。さらに、ドイツ法における遺産管理手続、及び、相続財産破産について調査を行った。いずれも、国内及び国外出張による現地調査を行うことはできなかったことから、文献・判例調査を行った。これらの調査を通して、それぞれの制度における、死因処分の目的となった財産の取り扱われ方を明らかにした。また、それぞれの制度における相続債権の行使、債権間のプライオリティーについてのルールを調査し、検討を行った。その上で、わが国において、相続財産が清算される個々の制度、すなわち、相続財産破産、財産分離、限定承認、相続人不存在の場合についての規律を、これらの諸外国の制度と比較し、対照した。さらに、遺贈や死因贈与、遺言信託といった、死因処分を行った者(行為者:遺贈者、死因贈与の贈与者、遺言信託の委託者など)に対する債権者の債権の優先劣後の規律に反映される諸要素を抽出し、死因処分の当事者だけでなく、信託受益者や相続人を含む関係当事者間の利益衡量の在り方について、考察を加えた。それらを踏まえて、わが国において、相続財産の清算制度を整備する際に、考慮すべき事由を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響で、国内外の出張を行うことができなかったが、文献調査をとおして予定していた研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ソフトな資産についての分配・帰属についての研究を行う。金銭を含む動産や不動産などの、ハードな資産だけでなく、情報・機会・能力といったソフトな資産についても、一種の財産権の割り当てによる分配・帰属を規律する機能を有する信認関係法理について、考察を加える予定である。また情報収集(モニタリング)をより低コストで行うことができる当事者に優先権(財産権)を付与するアレンジメントを保護することが、効率性改善という観点からは望ましいという分析とその限界についても考察する。これらの研究を通して、死因処分の目的財産そのものだけでなく、それに由来する利益の分配・帰属について考察するための手がかりを探る。
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Causes of Carryover |
本年度、国内外の出張を全く行うことができなかったため。来年度は、コロナの状況をみながら、国内出張を含む研究を実施する予定である。
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