2021 Fiscal Year Research-status Report
利益相反構造の有無を重視する観点からの会社法の解釈論の再検討
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20K01402
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
久保田 安彦 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (30298096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯原 心一 成蹊大学, 法学部, 教授 (00755738)
黒沼 悦郎 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (40170138)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 利益相反 / 配当政策 / 閉鎖会社 / 経営判断原則 / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究代表者である久保田安彦、ならびに、研究分担者である黒沼悦郎および湯原心一は、それぞれ以下の研究を行った。 第1に、久保田と湯原は、2020年度に続き、それぞれ、本研究の基礎的な作業として、米国会社法について、判例法を中心に、M&A(とりわけMBOやキャッシュアウト)や株式発行の分野において、どのような形で利益相反構造の有無に着目した議論が展開されているのかを概観し、その議論を整理する作業を行った。 第2に、久保田と湯原は、前記第1の研究も踏まえて、閉鎖会社では、配当政策をめぐり多数派株主・少数株主間に構造的な利益相反が認められること、および、米国では、こうした問題からの少数株主の救済がいわゆる抑圧救済法理を通じて(部分的に)実現されていることに着目し、かかる救済策をめぐる学説の議論、判例法の展開やその問題点について分析を加えた。その上で、かかる分析を参照しながら、わが国において、どのようにして少数株主に適切な救済を与え、多数派株主のインセンティブの歪みを是正すべきかにつき、解釈論および立法論による検討を行い、その成果を論文として公表した。 第3に、黒沼は、2020年度に続き、取締役の経営判断の誤りによる任務懈怠責任が問われる場面を取り上げ、(1)具体的にどのような事情がある場合に利益相反構造があると評価すべきなのか、および、(2)利益相反構造があるとされた場合に、経営判断原則に代わって、具体的にどのような基準によって取締役の任務懈怠の有無を判断すべきなのかの研究を進めた。 第4に、湯原は、利益相反に類似する問題として、投資家と元引受業者の利害が一致しない状況で生じる問題について検討を加え、その成果の一部を判例評釈として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者である久保田安彦、ならびに、研究分担者である黒沼悦郎および湯原心一は、それぞれ上記の研究を進めており、概ね順調に推移しているといえる。 ただし、2021年度も、2020年度と同じく、コロナ禍の影響により、十分な回数の研究会合をもつことができず、各自の研究成果の共有が必ずしも十分とはいえない点に課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、2021年度に続いて、研究代表者である久保田安彦、ならびに、研究分担者である黒沼悦郎および湯原心一が、それぞれの担当の研究を進展させる。その際、可能なかぎり、適宜に研究会合を設定し、各自の研究成果を共有した上で、それを各自の研究に活用することができるように心がけたい。
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Causes of Carryover |
研究協力者も交えた研究会合を行うために旅費の使用を予定していたが、コロナ禍により十分な数の研究会合をもつことができなかったため、予定通りの旅費の使用ができず、次年度使用額が生じた。当該額については、今後、状況を見ながら、少人数での研究会合を開催するための旅費として使用することを計画している。
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