2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K01408
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
若林 三奈 龍谷大学, 法学部, 教授 (00309048)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原発事故 / 包括的平穏生活権 / 包括的生活利益 / ふるさと喪失 / 慰謝料 / 損害論 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、福島第一原発事故による避難者等による損害賠償請求訴訟(集団訴訟)における損害論について、2020年から2021年にかけて出された各高裁判決を整理・分析し、その理論的課題を析出した。裁判手続が進むにつれ、原告らの主張する「包括的生活利益としての平穏生活権/包括的平穏生活権」の理解が深まり、その法益性が認知・確立されるとともに、その侵害結果としての「ふるさと喪失損害」の定着も見られる。加えて、仙台高裁、続く高松高裁において、3つめの慰謝料カテゴリーとして「避難を余儀なくされた慰謝料」が登場している。原発事故の本質(被害の出発点)が、大量の放射性物質による生命・身体に対する放射線被害の具体的な危機にあること(それゆえに原告らは避難を余儀なくされたこと)を示唆する点で重要である。併せて、近年、被告側から「弁済の抗弁」として出されている主張には、当事者間の合意の実質および法理論的にみて不合理な内容が含まれることを明らかにした。第2に、以上の集団訴訟に関する2020年までの動向(主要な地裁判決)について海外で発行されている日本法雑誌に、欧文で公表した。 以上に加えて、取引的不法行為について、不当勧誘にかかる裁判例を中心に整理したものを、近時の法改正を踏まえて公表する機会を得たので、総括し公表した。また損害論にかかる個別論点について、最新の裁判例について評釈する機会を得たので、最高裁判決および地裁判決の計2本について公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染拡大による影響から、昨年度に引き続き、予定していた国内外の出張は中止しているが、その多くは、適宜オンラインに切り替えて実施している。いくつかの制約や不便はあるものの、全体として見れば、概ね研究計画に従い、研究作業を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、関連する文献資料・情報収集を継続して行い理論的検討を深めていく。その際、法律実務家および法学分野にとどまらない多様な分野の研究者らとの交流を通して、被害実態の把握に努め、法理論の実践という観点にも留意したい。これらの成果については、適宜、公表していく。以上の作業を円滑に進めるため、関連する文献資料の購入を適宜行い、また引き続き出張に制限がかかる場合には、オンラインでの研究活動に支障が生じないよう周辺機器を必要に応じて強化する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、予定していた学会・研究会出張(国内・国外)の多くは、昨年度に引き続き、オンラインに切り替えて実施したものの、一部の国内外の出張については、2022年度に延期する措置をとったことによる。今後の国内外の感染拡大状況等を見つつ、必要に応じて、旅費に計上した費用は、物品費等に用いる。
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