2022 Fiscal Year Research-status Report
非婚の複合家族における子の養育の権利義務―フランスにおける議論を参照して
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20K01409
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
白須 真理子 関西大学, 法学部, 准教授 (50609443)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合家族 / 非婚カップル / 親権 / 社会的親子 / 子の利益 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が検討の対象とするparentalite概念について、関連する学説を精読し、分析した。本年度は、同概念が現行フランス法の枠組み、特に親権に与えた影響という観点から分析をおこなった。日本法と同様、フランス法においても、親権を第一次的に有するのは親である。そのうえで、親権との関係におけるparentalite概念については、親が果たすべき役割を強調し、特に親権の職能を強調する点に特徴があるといえる。 このことは、一方では、親の子育て支援政策を充実させる論拠となり、さまざまな社会保障関連の法律、デクレ、アレテ、通達に結実したことが指摘されている。他方で、民法典に規定される親権との関係では、その職能の強調は、その職能を果たせない親に代わって第三者がその地位に就く余地を生み出し、あるいはその正当化に寄与する概念ともなった。親権の主体の相対化といえよう。また、このような親権の職能の強調は、親権の標準化――すなわち国・社会が望む「良い親」であるべきとする傾向――をももたらしうる。かつて「親責任契約」を創設した2006年3月21日の法律第396号は、子の不登校と親の親権者としての能力を関連づけ、それを家族手当の一部又は全部の取りやめと結び付けていた。この法律は批判を受けて2013年1月31日の法律第108号で廃止されたが、その批判の主たる内容は、親権の職能の標準化にあった。parentalite概念が親権の標準化をもたらしうるとすれば、同様の批判が当たる。このような観点から、また概念の曖昧さを理由に、同概念の利用・多用に警鐘を鳴らす学説もある。 ※なお、eにアクサンテギュが付く箇所があるが、入力できないため、eで表記している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はおおむね予定通り進んだものの、全体としてはやや遅れているため、1年間の期間延長を申請し、承認を受けた。 「研究実績の概要」において示したとおり、parentalite概念は親の職能を強調し、それによってこの職能への第三者の参入を正当化する余地を生み出してきたことが明らかになった。しかし、2002年3月4日の法律第305号の制定過程でその指導原理として用いられたcoparentalite(parentaliteに「co(共同の)」という接頭辞がつく。)概念については、まだ分析の途上である。親としての職能を強調すると同時に、その共同性に着目するものであるといえるが、それを親権ではなくparentaliteで説明することの意義を検討する必要がある。 また、parentalite概念に言及する学説の精読・分析もまだ一部の学説についておこなったに過ぎないことから、引き続きそれらの分析をおこなう必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で示したとおり、引き続き、parentalite概念に関する学説を精読・分析するほか、coparentalite概念について分析する必要があると考えている。また、これらの研究を通じて、非婚の複合家族におけるヨリ具体的な権利義務がどのように民法典や社会福祉・家族法典に結実したのかを検討する。
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Causes of Carryover |
研究計画段階では2020年~2021年度にフランスでの在外研究を予定していたところ、新型コロナウィルス感染症の影響で2022~2023年度に変更したことが主な理由である。在仏中にさらに研究を進めるため、2023年度も引き続き使用する必要がある。 フランスに滞在中の時期を利用して、セミナー等への出席、文献収集、インタビュー等を積極的におこなうことを計画している。
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