2021 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental research on the principle of patent law under the affection by artificial intelligence and blockchain techhnology
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20K01415
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
平嶋 竜太 南山大学, 法学部, 教授 (70302792)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブロックチェーン技術 / 特許法理論 / 機械学習 / 人工知能 / 立法論モデル / 基軸概念 / NFT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人工知能(AI)技術及びブロックチェーン技術(distributed ledger技術)における近時の急速な発展・普及が、特許法に様々な影響を及ぼしつつある状況の下、「人工知能技術及びブロックチェーン技術の発展・普及による技術環境の変化に伴って、特許制度がイノヴェーション促進を中心とする役割機能を持続的に果たすため、法制度として、どのような適応的進化を図る必要があるのか」という学術的問いに対する研究を行い、特許法の基軸概念にいかなる及ぼしうる影響・変容についての理論的考察、基軸概念の再構成可能性、将来的な特許法制全体の見直しを視野に入れた立法論モデルの提示・評価を行うことを目的とする。 より具体的な目標としては、①人工知能(AI)技術及びブロックチェーン技術(distributed ledger技術)の発展・普及に伴って特許法の基軸概念にもたらされうる影響・変容について、当該技術の特徴と発展・展開の方向性を踏まえた理論的考察、②これらの技術環境の変化に適応して、特許制度がイノヴェーション促進を中心とした役割機能を持続的に果たすためには、特許法の主要な基軸概念として再構成されることが望ましい事柄の明確化と方向性、③これらを基に、現行特許法の解釈論による対応可能性に加えて、将来的な特許法制全体までも視野に入れた立法論モデルの提示と評価、を挙げることができる。 本年度は、機械学習技術に関連する特許発明における発明開示要件の在り方について、従前の実施可能要件・サポート要件との整合性についての考察を行い、ブロックチェーン技術を特許出願過程に取り入れることを仮定した場合に、従前の特許出願に関連する特許法の諸概念はいかなる変容が生じうるのかという点についての仮想的な研究に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、当初計画として明らかにする個別事項としては、おおむね、①人工知能(AI)技術・ブロックチェーン技術(distributed ledger技術)の技術的特徴及び 将来的発展の動向について分析検討及び明確化、②特許法による保護の局面につき、「発明」、特許要件(進歩性)、発明者、共同発明、明細書等の発明開示要件(記載要件)、間接侵害、等の特許法の基軸概念への影響・変容の比較法研究、③特許権付与手続の局面につき、人工知能 (AI)技術を活用した審査手続を前提とした場合に、特許要件、特許請求の範囲、明細書等の記載要件、発明の同一性、出願の補正要件等の基軸概念に及ぼされうる影響・変容と可能性についての分析検討、④特許権付与手続・ライセンス取引等へのブロックチェーン技術(distributed ledger技術)の導入を前提とした場合の影響についての分析検討、⑤以上の検討から得られた変容可能性に対して、解釈論の枠組みで対応しうる理論構成の検討、立法論モデルの提示・ 評価による再構成の探求、といったものを想定している。 本年度は、②および③について前年度に継続して研究を行って、一定の知見を得つつある。④については、ブロックチェーン技術の実態を踏まえつつ着手したところであるが、昨今のブロックチェーン技術と法制度を巡って、NFT(Non Fungible Token)に関連した著作権法制への影響を巡る議論が諸外国でも非常に活発化しており、これらの問題状況について把握することを優先している。このため、当初計画における検討事項より先んじるものとして、これらの議論のフォローを行っていること、引き続き、諸外国における情報収集等については、社会情勢の現状に鑑みて十分ではない状況が依然継続していること、等の事由より、全体的な進捗状況としてはやや遅れが生じているものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、当初計画に従って、引き続き、人工知能における特許法の基軸概念への影響の検討を深めつつ、ブロックチェーン技術を特許出願過程やライセンス契約の局面等に適用した場合における特許法における基軸概念についての理論的考察と研究を本格的に進めて、理論研究の深化を推進させる予定である。なお、現在までの進捗状況で述べたように、諸外国における情報収集については、引き続き、インターネットを最大限に活用することにより研究を進めることを中心に最善の代替策を採ることを模索する予定である。 なお、ブロックチェーン技術に関連した研究については、諸外国における議論が極めて活発になっているNFT(Non Fungible Token)に関連した著作権法制への影響を巡る議論についても、当初研究計画では明示的に取り上げていなかったものではあるが、積極的に研究の上で参照することによって、特許法制における理論研究を進めるうえでも活用したい。
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Causes of Carryover |
依然として、海外における調査研究等が十分に遂行しえない社会情勢の下にあることから、前年度使用計画額に剰余が生じたことを主とした理由として、次年度使用額が相応程度生じている。加えて、全体的な研究計画執行の遅れから、当初計画からの進行残額が生じ次年度使用となっている。これらについては、次年度の研究実施計画内容に対応して、代替的研究手段等の履行を中心に使用する予定である。
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