2020 Fiscal Year Research-status Report
医療的ケア児と家族の支援に向けた法的制度的課題の抽出と制度検討
Project/Area Number |
20K01416
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畑中 綾子 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 客員研究員 (10436503)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 医療的ケア児 / 家族 / 法的倫理的課題 / 支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療的ケア児の家族の語りデータベースの構築に向けて、医療的ケア児を育てる家族へのインタビューを実施する予定であったが、対面でのインタビューがCOVID-19の感染拡大防止の観点から困難となり、8月にオンラインインタビューの倫理審査等の準備を整え、9月からインタビュー実施をオンライン・対面の双方で行った。また、家族の語りインタビューの数が8名を超えたあたりで、インタビューの内容やリクルート方法に偏りがないか、本来入れるべき論点を十分に含んでいないのではないかという点を様々な専門家や当時者を含むアドバイザリー委員に検討してもらうアドバイザリー委員会を2021年3月に2日間に渡り実施した。その結果、医療的ケア児を育てる上での苦労や辛いことにフォーカスがあたることで障害者差別を助長させる懸念があることから、子育ての喜びや学びなどのポジティブな面にも光を当てることや、医療的ケア児の中には重症心身障害児だけではなく、軽症や中症の医療的ケア児など、いわゆる動ける医ケア児にもフォーカスを当てるべきではないか、との点が指摘された。また、医療的ケア児の支援に関して地域差や熱心な医療機関やキーパーソンがいるかどうかで大きく異なり、このような分析をすることも有用ではないかとの点が示された。 政策的な面では、2021年度の国会で「医療的ケア児支援法案」が審議される予定であり、医療的ケア児の支援不足が社会的にも議論されようとしている。実際に、学校教育を受けたくとも遠方のため通学を断念したり、保育園までは受入れがあっても人工呼吸器をつけているから通学バスに乗れず母親が小学校入学と同時に就労を断念するケースも多い。それ以外にも制度の狭間の問題が多くあることが理解された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4月当初はCOVID-19により対面インタビューが困難となったが、9月以降はオンラインインタビューの実施が可能となり、在宅ワークの普及によりインタビュイーの側でもPCの利用やZOOMなどのオンラインツールの使用に慣れてきた方が多く、また遠方の方とも日程調整がしやすくなるなどのオンラインによるメリットも合わさり、インタビュー数も当初の予定どおりまではいかなくともそれなりの人数を確保できた。また、今年度中に行う予定であったアドバイザリ―委員会もオンラインという形ではあったが開催でき、ここでも遠方の委員との日程調整が対面よりもスムーズであったことからおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは今年度のインタビュー実施件数の不足分をできるかぎり補うべく、インタビューリクルートを実施することである。しかしながら、これまで東京・神奈川などの都心部を活動の中心としている団体にお願いしてリクルートをしていたこともあり、地方部のインタビュー実施が十分にできていないことが課題である。ホームページ等で検索して代表メールにリクルートのお願いなども1件1件お願いしているが、それぞれの活動に多忙であることや、ホームページ公開という点がネックである点なのか地方部のリクルート活動は難航中である。1件1件丁寧なお願いが必要であると考えている。 また、インタビュー対象も重症心身障害だけではなく、軽症や中症も対象となるが、このリクルートも十分ではない。これらの子は知的障害がない場合もあり、保護者が自分の障害への思いを子どもに聞かせたくないとの思いや、将来社会に出て行く際にどんなことがあるかわからないため、控えたいとの思いがあるのではないかとの指摘があった。どんな子でも自由に生き、肯定される社会の保障がない限り、動画のインタビュー実施は大変に難しいことも分かり、今後このような広い視点での法的倫理的社会的課題について検討する必要があることがわかった。
|
Causes of Carryover |
本年度は開始当初から、COVID-19による感染拡大防止の点から、海外渡航や国内での移動が制限され、国際・国内学会や研究会も軒並み延期または中止となったため、これにかかる予算に大幅に未使用額が生じた。また、家族インタビューも医療的ケアという感染症にとくに気をつけるべき子どもをを育てている環境のため、対面は難しくオンラインインタビューの環境を整えるまでに時間がかった。 次年度には、同じような状況が続くと考えられるが、それでも在宅ワークや家庭内の通信環境を整えるご家庭が増えてきたことで、オンラインインタビューがスムーズにいくと考えられ、インタビュー件数を増やしていくことや、データベース構築に向けてのコーディング等をすすめていく。
|
Research Products
(1 results)