2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01423
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
宗田 貴行 獨協大学, 法学部, 教授 (60368595)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 消費者団体訴訟 / 消費者被害回復 / 返金命令 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、消費者の集団的被害回復と違反抑止について、これまで日本比較法学会及び日本消費者法学会、日本経済法学会でのシンポジウムで報告してきた。このため、それらでの研究・検討を踏まえ、松本恒雄編『消費者被害の救済と抑止ーー国際比較からみる多様性ーー」信山社2020年に、論文「ドイツにおける消費者法分野の被害救済・違反抑止手法ーー我が国における消費者被害の救済と抑止の手法の課題ーー」を掲載した。これは、消費者委員会の第14回消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ(2018年11月20日)での報告「消費者法分野における違法収益の剥奪に関するドイツ法を参考にした日本法の検討」の内容も含むものであり、現在の我が国の消費者法の執行方法の改善に関する具体的な提案を行うものである。 第2に、上記学会報告での検討を踏まえ、すでに連載をスタートさせていた行政処分による集団的消費者被害回復を論じた現時での総集編的内容の論文の続編を2本、大学紀要に公表した。すなわち、単著「行政処分による集団的消費者被害救済――EU消費者保護協力規則(2017年)制定を踏まえて――(三)(四)」獨協法学111号及び112号2020年を発表した。 第3に、近年の筆者の研究業績について、財団法人公正取引協会第35回横田正俊記念賞を2020年10月22日受賞した。 第4に、これらを踏まえ、勤務先である獨協大学から、獨協大学学術研究顕彰を2021年3月10日に受けた。 第5に、10年以上にわたる研究をまとめた単著『消費者団体訴訟の理論」信山社2021年1月28日を公表した。同書は、ドイツでの滞在研究等に基づき、我が国の適格消費者団体の差止請求権制度の理論構成、差止請求権の種類・目的・要件・内容、妨害排除請求権に基づく集団的消費者被害回復、消費者裁判手続特例法上の手続の改善策の検討を行うものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で、当初予定していたドイツでの夏の滞在研究が実施できなかったことから、現地での調査ができなかったため、本研究におけるその面での成果が十分ではなかったことは否めないものである。とはいえ、年間を通じて、インターネットによる情報の収集、我が国の立法の議論・判例・学説の整理をじっくり時間をかけて行うことができたといえる。 このようなことから、従来から10年間以上書き溜めていた原稿に大幅に修正を施し、一冊の書として上記『消費者団体訴訟の理論」信山社2021年を上梓することができた。2020年には、EUにおいて、新たな消費者団体訴訟に関する指令が制定されるに至ったため、その制定の議論を検討・分析し、同書の重要な部分を執筆することができたことは大きい。同書は、消費者の集団的救済を行う消費者団体訴訟の理論構成、請求権の種類・目的・要件・内容、妨害排除請求権に基づく被害回復、消費者裁判手続特例法上の手続のか改善について、ドイツ及びEUの議論の展開を踏まえて検討するものであり、まさに、集団的消費者被害回復方法の検討を行う本研究の中核部分を占めるものである。 また、当初予定していたドイツでの夏の滞在研究が実施できなかったことから、そのための費用を同書の献本のための費用に充てることができ、研究費の有効な利用の活路を見い出し得たといえる。そして、献本の反応として、すでに多くの送付先の諸先生から、同書に関する有意義なご意見を頂戴できた。これを活かして今後研究を発展させたい。 このようなことから、今年の本研究は、急遽、当初の予定を変更したが、その結果、上述のように、拙著『消費者団体訴訟の理論』としてこれまでの研究をまとめることができ、当初の計画以上に研究は進展しているといってもよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、民事的手法による集団的消費者被害回復の研究の進展がみられたが、行政処分による集団的消費者被害についても、大学紀要に論文の連載を継続中であり、この連載を終結させることが、今後の研究の目下のところの目標ということができる。これは、すでに、原稿を用意しており、獨協法学115号に掲載する予定である。 これらの研究に加えて、デジタル・プラットフォーム企業による消費者法違反に関する近時の我が国における消費者保護立法や法改正、EUおよびドイツにおけるデジタル・プラットフォーム取引に関する立法や改正の展開が、行政処分による集団的消費者被害回復の議論にとって有する意義について、検討を行いつつある。このため、これらの検討をインターネット上の資料や、紙媒体の文献等の収集・分析によってさらに推し進め、本研究の第二の柱である公法の側面についての集団的消費者被害回復の研究を進めることが、今後の研究の推進方策といえる。 このような行政処分による集団的消費者被害回復に関する一連の研究成果は、すでに一定の分量(20万字を超えるもの)となっている。このため、これをまとめて一冊の研究書とし公表することを計画している。 コロナ禍によって、ドイツで夏に予定している滞在研究が困難ないし不可能となっているので、本研究にとって必須の専門雑誌やコンメンタールの閲覧のため、勤務校のドイツの競争法分野に関するデータベースの拡充を大学に依頼し実施した。これによって、2021年4月1日から、関連する多くの専門雑誌やコンメンタールの閲覧が可能となっている。ドイツでの関連機関へのヒアリング調査を、Zoomなどを駆使して行うことも検討している。このため、2021年夏において、ドイツでの滞在研究が実施できない場合にも、これらを最大限利用して、従来に増して充実した体制で、本研究の促進を行うことができると考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で夏のドイツでの滞在研究を実施できなかったことから、旅費の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。 ただし、滞在研究のための支出の代わりに、出版した書籍の献本のための支出があったことから、次年度使用額を、僅かなものに止めることができたといえる。 翌年度分として請求した助成金と次年度使用額とを合わせた助成金は、従来から予定している研究資料の収集のための図書購入や、ドイツでの滞在研究が可能であれば、係る滞在費用に使用し、本研究の目的の達成のために、有効に活用することとしたい。特に、消費者団体訴訟に関する新しいEU指令(2020年)についてのコンメンタール等の解説書や、ドイツ競争制限禁止法の第10次改正(2021年)に関する逐条解説書等の資料、さらには、EUデジタル・コンテンツ・サービス指令や、新しく制定されることが予定されているEUデジタル・サービス規則やEUデジタル市場規則に関するコンメンタール等の文献が、多く出版されることが予想される。このため、それらの購入のために、助成金を活用することを予定している。
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Research Products
(4 results)