2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K01425
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
宮下 紘 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80506519)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 憲法 / プライバシー権 / 個人情報保護 / 表現の自由 / GDPR / 忘れられる権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目は,次の視点から1年目に読解を進めた忘れられる権利に関連する論文や判例評釈をまとめた。第1に,比較法的考察の研究を進め,EU司法裁判所の判決(Case C-507/17,Google v Commission Nationale de l'Informatique et des Libertes (CNIL))の影響について分析を行ってきた。同判決がもたらす「ブリュッセル効果」,すなわちEU法の第三国への影響力について,Anu Bradford, The Brussels Effect (Oxford University Press 2020)第5章の翻訳を行い,公表した(庄司克宏監訳『ブリュッセル効果 EUの覇権戦略』(白水社・2022))。 第2に,関連して欧州人権裁判所の判決(Biancardi v Italy,Hurbain v. Belgium等)について考察し,表現の自由とプライバシー権との比較衡量の枠組みや報道機関のアーカイブス運用について検討を行ってきた。メディアや出版社関連の研究会において報告を行ってきた。 第3に,デジタル改革関連法や日本の令和2年個人情報保護法改正に伴う消去・利用停止請求に関連する論文等の読解を進めてきた。個人情報保護法の行政法規としての側面と,消去等の民事請求との関係性について考察を進めてきた。成果の一部として,「デジタル政策とプライバシー保護」判例時報2503号(2022)を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は感染症対策のため行動制限が続き,予定していた国際会議での発表が中止されるなどしたため。次年度以降に発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3年目は,これまでの研究成果の発信を行っていく予定である。具体的には,表現の自由とプライバシー権との比較衡量の判断枠組みや,日本で生じているインターネット上の削除請求に関連する裁判や法制度(特にプロバイダ責任制限法の法改正動向)について研究を進めていく予定である。さらに,検索事業者の法的位置づけについては,日本の最高裁判所は表現行為としての性格を有すると判断したのに対し,EU司法裁判所では検索事業者の活動を経済的利益の問題と捉える対比についても検討を行ってきた。デジタルプラットフォーム事業者の法的規律アプローチにも関連する問題であるため,諸外国の動向を踏まえ研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた国際会議が中止されたため,次年度に参加する予定である。
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