2020 Fiscal Year Research-status Report
知的財産法における公示機能の確保ー著作権法および標識法を中心にー
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20K01432
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
小嶋 崇弘 駒澤大学, 法学部, 准教授 (80722264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 表示の稀釈化 / 著作権の権利制限 / 報酬請求権 / 法定許諾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、知的財産法(特に標識法および著作権法)における公示機能を確保し、外部性を有する成果物の利用または市場における商品間の競争を促進するために、望ましい解釈論および立法論を検討することを目的とする。 2020年度は、第1に、標識法における稀釈化規制の正当化根拠について検討を行った。稀釈化には表示の不鮮明化および汚染という2つの類型が存在するところ、まずは後者の表示の汚染に対する規制を対象に、その正当化根拠および保護範囲について検討を行なった。具体的には、米国商標法における表示の汚染規制に関する主要な裁判例および学説を調査・分析した。その結果、表示の汚染に対する規制を正当化するためには、性的な商品・サービスまたは品質の劣る商品・サービスに著名商標が使用された際などに、需要者に生じた負の印象が著名商標にフィードバックすることで、著名表示主体の信用について損害が生じることが必要であることなどを明らかにした。 第2に、著作物の権利処理の円滑化を図るための制度の一つである報酬請求権を伴う権利制限および法定許諾について検討を行なった。具体的には、ライセンス優先型権利制限規定として位置づけられる教育機関における著作物の利用に関する英国著作権法35条および36条の制度概要、運用状況、および利害関係者による評価を調査・分析した。加えて、オーストラリア著作権法における法定許諾についても同様の調査・分析を行った。その結果、両国の制度は教育分野を中心に比較的大規模に運用されているものの、オンライン学習管理システムの普及や著作物の流通形態の変化に制度が適合しなくなってきており、制度を変更する必要があることを明らかにした。 これらの研究成果について、複数の研究会において報告を行なった。また、2021年度中に論文として公表することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、当初の研究計画にしたがい、表示の稀釈化および著作権法における権利処理円滑化のための諸制度について検討を行い、その成果を研究会で報告した。もっとも、新型コロナウイルス感染症の拡大により、外国での調査および対面での国内学会等への参加は実施できなかった。この点を加味しても、総合的に見ればおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、当初の研究計画に従い、著名表示の汚染に関する研究成果をまとめて論文として公表するとともに、著名表示の不鮮明化に関する研究に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費については、国内外の研究会等へ複数回出張することを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて研究会等が中止またはオンラインに変更となったため、支出の必要がなくなった。当面の間は、文献調査を中心とせざるを得ないため、研究内容に関する図書雑誌資料の購入に支出する予定である。
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Research Products
(7 results)