2021 Fiscal Year Research-status Report
データ主導経済における営業秘密法制とデータ保護法制の再構築
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20K01435
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山根 崇邦 同志社大学, 法学部, 教授 (70580744)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 営業秘密 / 限定提供データ / データプロデューサーの権利 / データベース権 / 欧州委員会 / データ保護 / データ経済 / 知的財産法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の3点について研究を実施した。 第1に、従業員による営業秘密データの持ち出しが問題となった日本の裁判例を調査し検討を行った。特に、2017年から2021年までの5年間の民事および刑事の裁判例を渉猟し、従業員による持ち出しに対する民事的・刑事的対応の動向を分析した。民事では、持ち出された営業秘密の現実の使用・開示の事実の証明がなくても、使用・開示のおそれを理由に差止めを認める事例があること、刑事では、営業秘密領得罪で刑事訴追する事例が多いこと、営業秘密領得罪による刑事訴追を先行させつつ、刑事事件の終結後に捜査機関が収集した証拠資料等を民事訴訟の中で証拠利用する事例も見られることが明らかとなった。 第2に、国際プロジェクト「Trade Secret Protection: Asia at a Crossroads」への参加(オンライン)を通じて、他のアジア諸国における営業秘密保護の現状と課題の把握に努めるとともに、アジア諸国からみた日本の営業秘密法制の現状と課題を検討した。 第3に、欧州におけるデータ経済の進展とデータベース権の有効性をめぐる議論動向について調査した。特に、データベース権の廃止論の高まりを受けて、そのようなデータベース権の廃止という措置がEU基本権憲章における知的財産権の「憲法化」との関係で可能なのか、可能だとしてもどのような制約が考えられるかについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、従業員の営業秘密データの持ち出しに対する民事的・刑事的対応に関して、調査結果を論文としてまとめることができた(「最新判例にみる営業秘密漏えい時の民事的・刑事的対応の検討」ビジネス法務21巻12号14頁)。 第2に、アジア諸国からみた日本の営業秘密法制の現状と課題について、営業秘密の侵害行為に対する刑事罰の適用状況および営業秘密領得罪における「不正の利益を得る目的」要件の解釈をまとめることができた(The Criminal Punishment for Trade Secret Infringement and the Element of "Purpose of Wrongful Gain" in Japan, in TRADE SECRET PROTECTION: ASIA AT A CROSSROADS, 62-70 (Kung-Chung Liu & Reto Hilty eds., Wolters Kluwer, 2021))。 第3に、データベース権の廃止論とEU基本権憲章との関係に関して、基本権としての知的財産権の立法裁量をめぐる学説・裁判例を踏まえつつまとめることができた(「知的財産権の政策形成をめぐる立法裁量とその制約――データベース権の廃止論とEU基本権憲章との関係を素材として」高倉成男=木下昌彦=金子敏哉編『知的財産法制と憲法的価値』(有斐閣、2022年)297頁)。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、当初の研究計画にそって本研究課題を遂行することを予定しているが、新型コロナウイルス感染症の感染状況に応じて、臨機応変に研究を進めたい。
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Research Products
(4 results)