2021 Fiscal Year Research-status Report
現代アメリカ政党の支持基盤と集票過程の変容:トランプ政権以後の検証
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20K01441
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 将人 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80588814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 選挙 / 政党 / 共和党 / 民主党 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年度目においては、トランプ政権期を通じてアメリカが経験した民主主義をめぐるジレンマの解明を各方面から点検した。まず民主主義基金有権者調査グループ(Democracy Fund Voters Survey Group)報告書「2016年における政治的分断とその後」の論点(a. 共和党の支持層の経済問題での左傾化、b. 民主党支持層の社会的アイデンティティ問題での左傾化、c. 三割ほどの有権者が経済的リベラル性と社会アイデンティティでの保守性を同時に持つ)を踏まえ、この報告を補足することから共和党と民主党の政党変容の分析を進めた。第1に、共和党の経済におけるリベラル化とアイデンティティでの保守化は2016年前後に突如起きた現象ではないことをティーパーティ運動のリバタリアンと社会保守の分裂経緯から紐解いた。第2に、共和党の経済での「リベラル化」の定義と範囲が一様ではない点を共和党支持層内での保護主義的な性質や財政支出への寛容度は増したが、減税路線の棄却を伴うものではない問題から吟味した。また、民主党に関しては、第一軸のニューデモクラット、第二軸の人権や環境に比重のある穏健派内左派、第三軸としての伝統的リベラル派、第四軸としての新世代左派(ウォーク・レフトwoke left)の分類を仮説的に試みた。他方、メディアのイデオロギー的な分断、ソーシャルメディアなど新技術応用、とりわけ「インフルエンサー」利用アウトリーチなどキャンペーンの諸問題については、アメリカ発の技術が最も先進的に応用され、なおかつ二大政党と予備選挙制度、メディアの党派的分断で類似性がある台湾との比較研究からアメリカの特質を浮き彫りにする比較政治的な調査にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延により、アメリカでの現地調査が困難となったが、オンラインによる聞き取り調査で代替した。他方、韓国、台湾など東アジアの政治学者とシンポジウムでの意見交換の機会が増えた他、台湾の選挙キャンペーン・メディアの実務家への聞き取り調査も加速され、比較政治的なアメリカ政党分析を深める好機契機にもなった。論文、書籍などの成果物に関しては、大いに成果があった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの蔓延により、アメリカでの現地調査が困難な中、中間選挙年であることを考慮し、2つの方向で研究成果の維持に努める。第1に政党や活動家のオンライン会議への非公式の参加によるオンラインでの観察調査、第2にアジアの研究者との相互連携による比較考察をさらに継続することである。
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