2022 Fiscal Year Research-status Report
現代アメリカ政党の支持基盤と集票過程の変容:トランプ政権以後の検証
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20K01441
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 将人 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80588814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 選挙 / 政党 / 共和党 / 民主党 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年度目においては、3点に注力してアメリカの政党分析を進めた。第1に、予備選挙の変容のである。トランプとサンダースの左右双方のポピュリズムの製造場になったアイオワ州に焦点を絞り、政党の分極化過程を分析した。予備選挙が全米一斉投票にしないのは小さな州を緒戦にすることで資金力や知名度のない新進候補にもチャンスを与える意義があったからだが、アイオワが人種的少数派の少ない白人州であることや農業に偏った産業構造など「アメリカの平均ではない」問題を再考し、2016年と2020年の大統領選挙の含意を整理した。第2に、内政と外交の重複の拡大についての分析である。バイデン政権が掲げる「ミドルクラスのための外交」(U.S. Foreign Policy for the Middle Class)における「ミドルクラス(中間層)」の政治的定義が冷戦直後のクリントン政権期と比べると、グローバル化の被害を受ける労働者を含む苦境に喘ぐすべての一般市民に拡大していること、内政概念が外交に持ち込まれていることに着目し、文化的リベラル層だけでなくトランプ支持に傾いた労働者層を囲い込むには、バイデン政権にとってオバマ政権、トランプ政権という二つの政権との差別化は必須だったが、その均衡点として設計された「中間層のための外交」を詳細に吟味した。アフガニスタン撤退、対中政策などの事例で確認した。第3に、オンライン技術の政治への多元的な影響である。中でも海外勢力がアメリカの国内政治や選挙過程に与える影響をソーシャルメディアのアカウントを左右双方で育成する介入や偽のニュースメディアの生成など事例で確認し、分極化の脆弱性が民主主義の危機に至っていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延により、アメリカでの現地調査が引き続き困難な状況は続いているが、過去に行った現地調査の精査と分析で成果物を取りまとめた。アイオワ州での現地調査での党員集会の運営過程を観察と運営関係者への聞き取り調査で、2020年のトラブルがアプリだけに起因するものではなく、カード投票方式の制度変更が関係していることを明らかにして論文化した。また、外交の内政化については共著への所収論文として刊行し、ソーシャルメディアの分析についてはTwitter社らプラットフォームの2022年中間選挙への対応を軸に分析を取りまとめた。他方、アメリカ国内の新規の現地調査は実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年大統領選挙では、1972年から続いてきたアイオワ党員集会が、民主党側で日程と方式の両面で変更される。緒戦州の結果が選挙戦の世論調査や後続州の有権者の投票行動に影響を与えるため、緒戦州が握る過大な影響力は問題だったが、州の順位変更が共和党側の予備選順、候補者の勝敗可能性、キャンペーン手法などにどのような影響を与えるか注視する。また、ウクライナ情勢、米中対立と台湾をめぐる情勢など外交に関して政党内の世論形成過程にも分析を広げる。諸般の事情でアメリカ現地調査が首尾良く進められない場合、研究の延長も検討の視野に入れる。
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Causes of Carryover |
諸般の事情で海外現地調査を実施できなかったが、次年度以降に実施予定である。
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Research Products
(11 results)