2022 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における自由主義的改革の系譜:「貿易立国」から「埋め込まれた自由主義」へ
Project/Area Number |
20K01447
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧口 剛 大阪大学, 大学院法学研究科, 教授 (10257959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 洋 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (10795181)
矢嶋 光 名城大学, 法学部, 准教授 (30738571)
醍醐 龍馬 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (70802841)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 貿易立国 / 産業立国 / 自由通商 / 新自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、引き続き国内外、中央・地方における資料収集とその分析を行いつつ、研究代表者の瀧口が主催する研究会ににより意見交換を行い、研究成果を公表した。 明治大正期における貿易立国、産業立国構想の展開について、醍醐と久野は次のような研究を行った。醍醐は榎本の動向を中心に資料収集を行い、小樽における榎本の経済的基盤形成や市街開発に果たした役割を検討し、また殖産興業に取り組んだ榎本のテクノクラート的側面を、石鹸製造への関心を軸にして検討した。さらに榎本がオランダで作り方を学んできた石鹸を、文理融合・産学連携の手法で本格的に復刻し、研究成果を社会に還元した。 久野は、犬養毅の資料を岡山などで収集しつつ分析を進め、『近代日本政治と犬養毅』(吉川弘文館)を刊行し、犬養の貿易立国構想の展開を地域支持基盤との関わりから体系的に提示した。さらに、「アジア主義」に関する犬養毅の論説記事を読み進め、第一次世界大戦以降における犬養の国家構想(産業立国構想)の更新過程についても検討を進めた。 昭和前期における新自由主義の系譜を担当する瀧口と矢嶋は次のような研究を行った。瀧口は平生釟三郎と大阪財界を中心に自由通商運動について資料の分析を進めつつ研究を進めた。矢嶋は自由主義派の外交官である佐藤尚武に関する資料調査を長期滞在中のポーランドを中心にヨーロッパの文書館で進めた。ポーランドでは、自由主義派の外交官・政治家で憲法9条の制定に携わった芦田均の9条論に関する発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
関連資料の収集、分析を一層すすめて、研究会を行い、論点を深めた。 資料の収集、分析状況としては、明治期では醍醐が北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターや東京大学史料編纂所、横浜開港資料館でアメリカの外交文書を中心に調査した。大正期では、久野が国立国会図書館や犬養木堂記念館、岡山県立記録資料館、野﨑家塩業歴史館などでの史料収集を継続し、中央・地方の視点から、明治後期~第一次世界大戦期頃における犬養毅の政治指導の特質を分析した。昭和期では、瀧口が大阪財界の資料収集をしすめ、また国立国会図書館にて関連資料を調査した。矢嶋は自由主義派の外交官である佐藤尚武に関する資料調査を進めた。具体的にはポーランド公使時代(1923-27年)とベルギー大使時代(1931-33年)の資料に関して、それぞれの国の公文書館を訪問して調査をおこなった。また、ポーランドの公文書館には満洲事変に関する資料が数多く残されていることがわかり、その調査を行っている。 マチカネ政治史研究会などにおいて、関連するテーマについて報告を行い、野間俊希「日韓国交正常化と北朝鮮密約の誕生―請求権交渉(一九六〇~一九六五)における日本外務省の「相互黙認」案と基本条約の締結―」、望月みわ「南京日本郵便局をめぐる日清交渉」、新谷裕太「渡邉公太『石井菊次郎』(吉田書店、2023)を読む」の各報告において、議論を深めた。 また学会報告、著書、論文の公表などを進めた(別表参照)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の一層の広がりが見えてきたので、Ⅰ年間延長して研究を推進して一層の資料集分析と、それにもとづく成果の公表を行う。方法としては引き続き個人の資料の収集分析と同時に、研究会での意見交換により全体の研究をとりまとめてゆく。 明治大正期における貿易立国、産業立国構想の展開について、醍醐が樺太など日露国境問題と北海道開発に関して研究を進め、久野は、犬養毅の第一次世界大戦後の産業立国構想を中心に研究を進める。 昭和前期における新自由主義の系譜については、瀧口が昭和戦前期において自由通商運動と大阪財界が果たした役割にに関する研究を一層すすめ、矢嶋が自由主義派の一角を担い、ヨーロッパで連盟対策を担った外交官たちの満洲事変期における外交戦略について明らかにしていく予定である。 また研究会において、それぞれの研究及び関連研究の報告を行い、議論によって個々の分析の関連、総合化の検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため予定していた海外出張を次年度に延期することにしたため。
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Research Products
(8 results)
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[Book] 小樽学2023
Author(s)
醍醐龍馬
Total Pages
416
Publisher
日本経済評論社
ISBN
9784818826311
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