2022 Fiscal Year Research-status Report
The Communist Party of China's Multidisciplinary Policy Planning and Implementation: Its Arctic Engagements and Beyond
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20K01449
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
益尾 知佐子 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (90465386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 富士夫 北海道大学, 北極域研究センター, 准教授 (20542278)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 北極 / 中国 / 科学 / ロシア / 観測 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、中国科学者の北極域国家との協力状況を具体的に検討するため、アイスランドで調査を行った。中国はアイスランド北部のアクレイリにオーロラ観測所を作り、関連の研究を進めている。これは習近平政権期に入って以降の比較的短期間に、国際会議などの場を介し、中国側からの積極アプローチで実現されたものとわかった。観測所建設にあたり、中国側は観測所周辺の土地の購入を望んだが、それがアイスランドの国内法で禁じられていたため、地元との協力形態を作り、実際には中国側が資金の全面提供を行った。なお、観測所は(少なくとも原則上は)オープンな施設として運営されており、どのような設備を入れるかは両国の細かい交渉で話し合われ、アイスランド側科学者の要望があればデータは全面開示することになっている。また過去には日本の科学者と、老朽化した日本の観測所をここに移設する可能性がかつて議論されていたようだ。 科学協力の分野以外に、ロシアのウクライナ侵攻が北極域の国際協力にどのような影響を及ぼすかについても聞き取り調査を行った。北極域の国々にはこの地域の政治化を避けたいという意向が強いが、ロシアが他国を侵攻する状況ではそれは困難で、北極評議会の運営などに大きな困難が生じている。他方、2023年3月の中ロ共同宣言が示したように、ロシアのウクライナ侵攻後、中国はロシアとの関係をむしろ強化するようになった。ロシアは北極域国家の中で孤立しており、中国との協力分野を広げざるを得ない。ロシアのウクライナ侵攻が北極域をめぐる国際政治に大きな影響をもたらし、また米中関係の緊張などもあって、中国の北極域へのコミットメントも急速に変化していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は北極域の国々で複数の海外調査を行うことを予定していた。しかし、新型コロナの流行やそれに伴う航空券代・ホテル代の高騰で、当初予定の通りに海外調査を行うことはできなくなった。その分、本研究課題の進捗はやや遅れている。調査を2023年度に延長したことで、この遅れを挽回できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
延長後の最終年度となる2023年度は、航空券代・ホテル代の高騰を視野に入れつつも、支出可能な範囲でグリーンランド等の北極域で引き続き調査を行いたいと考えている。それにより、米中関係の緊張化、新型コロナの流行、ロシアのウクライナ侵攻などの要素が加わった後に、中国の北極域進出に新たにどのような変化が生じた・生じているのか研究していきたい。 また習近平政権第3期目に入り、中国では科学技術政策をめぐる政策決定と政策執行のあり方に重大な変化が生じている。総じて言えば、中国共産党中央に科学技術委員会が設置されるなど、中央による全国各組織の統制が強化されている。こうした変化が中国国内とグローバルなレベルで全体的にどのような意味を持つのか、研究終了までに再度しっかりと検討し、国際会議などで成果を発表していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行によって国家間の移動がほぼストップし、2020-21年度には予定していた海外調査には全く行けなかった。予定額の一部は国内調査や資料の購入に回したが、本来予定していた調査をそれらで完全に代替することはできなかった。 2023年4月現在、海外航空券や燃料費はなお高止まりしており、現在残っている研究費で国際学会での調査報告まで行うことは現実的に難しい。だが、2023年度中に北欧への海外調査はもう一度実施したいと考えている。
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Research Products
(26 results)