2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K01454
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小山 俊樹 帝京大学, 文学部, 教授 (90454503)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近代日本 / 機密費 / 政治 / 行政 / 世論 |
Outline of Annual Research Achievements |
第三年次(令和四年度)は、研究計画に基づき、昨年度に引き続いての地方出張を伴う資料調査を予定していたが、残念ながら日程や先方都合その他の事情にて断念した。そのため、資料館等への複写依頼やデジタル化文書および、新聞雑誌類などの世論関係資料の解析を主として行い、論文等の執筆作業を進めることになった。 期間全体を通して、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う資料調査・閲覧利用の著しい制約が課せられ、充分な調査活動を行い得なかったことは大変残念であった。それでも、各官公庁や新聞雑誌類、および首相経験者の旧蔵史料群などの調査にあたり、機密費制度の実態解明および制度に影響をもたらした世論の動向について好ましい成果を得られた。その一端は、拙編『近代機密費史料集成Ⅱ』(ゆまに書房、2021年)の刊行および解題執筆でも触れたが、失われたと考えられていた史料から具体的な機密費使途、および制度変遷の根拠を見出して検討できた意義は大きく、研究の大幅な進展を見た。機密費をめぐる政党とメディアとの関係はもとより、時の首相官邸の機密費使途に関する具体的な分析を行えたことで、本研究課題の議論を行う素地が成立したと見るべきであろう。また、論文「近代日本の謀略と機密費」において触れたように、陸軍機密費を原資とする各種謀略活動に関して、歴史的推移や機密費統制システムとの関連などを解析し、世論との関連を含めて明らかにできたことは成果である。今後は、機密費使途の大部を占める陸軍関連の分析充実を図ったうえで、機密費制度の形成・変遷をもたらした過程を詳細に検討し、本研究の完成をめざす予定である。
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