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2023 Fiscal Year Research-status Report

中国の影響力メカニズムの比較政治学的研究―「恵台政策」を中心に

Research Project

Project/Area Number 20K01460
Research InstitutionKyoto Women's University

Principal Investigator

松本 充豊  京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywordsエコノミック・ステイトクラフト / 恵台政策 / 中国の影響力 / 台湾の若者 / クライアンテリズム / 習近平
Outline of Annual Research Achievements

本年度の研究実施計画では、同期間中に中国で習近平政権2期目終了という節目を迎えることに鑑み、習政権の恵台政策を総括すること、および2024年1月の台湾の総統選挙の結果を踏まえた、その効果の検証を予定していた。しかし、当初計画の大幅な変更と進捗の遅れから、引き続き台湾の若者に対する中国での就業・起業支援策の考察に取り組み、習政権の実践を分析した。具体的には、中国国内の各地で設立された「海峡両岸青年就業創業基地」(創業基地)の事例をもとに、台湾の若者の中国での就業・起業支援策を「利益供与型」のエコノミック・ステイトクラフトと捉えて、それを通じた中国による影響力行使のメカニズムをクライアンテリズムの視点から分析した。特に政策実施過程に内在する要因が効果的な影響力行使を妨げた可能性を検討した。
分析の結果、以下のことが明らかにされた。第1に、創業基地をめぐる支援策では実施過程で代理人問題が発生し、それが中国による影響力行使の効果を抑制する一因となったと考えられる。第2に、習政権は利益誘導の舞台を中国に移したことで、影響力行使のメカニズムは、胡政権期の中台間にまたがる「両岸クライアンテリズム」から、中国国内でのクライアンテリズムに変わった。それにより、恵台政策は台湾社会内部の矛盾から切り離されたが、逆に中国の国内政治に埋め込まれることになった。中国の若者の就職問題が深刻化する中では、台湾の若者への支援策は中国社会に新たな矛盾を生み出す可能性がある。また、習近平の福建時代の経験と習政権の実践との関連性も見出された。台湾の総統選挙での恵台政策の効果の検証は課題として残った。
研究成果の意義として、習政権の実践について、本来的に「対外政策」であるはずの恵台政策が中国社会の新たな矛盾の契機となる可能性、および習近平の福建時代の経験に視野に入れた理解の必要性を指摘したことがあげられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

本研究課題の初年度から、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、現地への渡航と国内での移動や研究施設の利用が大幅に制約される事態が続いた。そのため、台湾での現地調査は困難となり、現地での文献調査やインタビュー調査が実施できなかった。本年度は感染状況が終息に向かい始めたことで、ようやく現地調査を再開することができ、国内での調査活動も相応に進めることができた。研究活動にも一定の進捗が見られたが、前年度までの活動の進捗の遅れから、本年度の研究活動も必ずしも実施計画どおりには遂行できず、依然として遅れが取り戻せていない状況にある。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題は本年度(2023年度)が最終年度であったが、補助事業の期間延長を申請し承認された。ついては、2024年には国内での文献調査と、休暇を利用した台湾での現地調査を予定している。これまでの研究実施計画の遅れに鑑み、その適宜変更も視野に入れながら、文献の購入やインターネットを活用した文献調査を中心とし、調査・分析には可能な部分から柔軟に取り組んでいく所存である。現地への渡航の際には、インタビュー調査を実施できる条件が整えば、その段階で関係者への意向確認を進めて実現を目指したい。

Causes of Carryover

本年度は新型コロナウイルスの感染状況が収束する方向に向かい、ようやく現地調査を一部再開し、国内での資料調査を進ることもできたが、これまで大幅な進捗の遅れから、旅費を中心に計画どおりに使用することができなかった。本研究計画への取り組みが、学内業務や他の研究活動との関係で時間的に圧迫されてしまったこともあり、助成金の使用計画に影響した部分もあった。次年度は現地調査を含めた国内外での調査活動の実施を予定しており、助成金の使用を適正化を実現できるものと考えている。

  • Research Products

    (5 results)

All 2024 2023

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 2 results)

  • [Journal Article] これまでと違った台湾ダブル選挙2024

    • Author(s)
      松本充豊
    • Journal Title

      東亜

      Volume: 681号 Pages: 10~17頁

  • [Journal Article] 台湾ダブル選挙をどう見るか2024

    • Author(s)
      松本充豊
    • Journal Title

      金融財政Business

      Volume: 11217号 Pages: 4-8

  • [Journal Article] エコノミック・ステイトクラフトとしての「恵台政策」―「海峡両岸青年就業創業基地」の事例の一考察2023

    • Author(s)
      松本充豊
    • Journal Title

      問題と研究

      Volume: 第52巻2号 Pages: 79~110頁

    • DOI

      10.30391/ISJ

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 2024年総統選挙に向かう台湾2023

    • Author(s)
      松本充豊
    • Organizer
      大阪日台交流協会
    • Invited
  • [Presentation] 台湾の選挙政治と2024年選挙の特徴2023

    • Author(s)
      松本充豊
    • Organizer
      中曽根平和研究所NPIウェビナー「2024年台湾選挙の行方~台湾政治経済と国際関係の交錯~」
    • Invited

URL: 

Published: 2024-12-25  

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