2020 Fiscal Year Research-status Report
Search for Common Ground out of US Inter-Governmental Conflicts
Project/Area Number |
20K01461
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大津留 智恵子 関西大学, 法学部, 教授 (20194219)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | アメリカ政治 / 連邦制度 / 連邦・州・地方の協働 / 市民社会 / 分断化 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、まず政治的立場の異なるアクターの間に共通空間を構築する方向で、積極的に活動を行ってきたシカゴ市において、移民のエンパワメント政策の調査を行うことを計画していた。続いて州政府のあるスプリングフィールド市において、州と地方政体の間での協働政策の調査を実施し、その後ワシントンDCにて連邦政府レベルで移民支援のロビイングを行っている団体に、連邦・州・地方政体の協働の実態とその評価をめぐる聴き取り調査を行い、並行して連邦議会で移民政策に関する資料調査を行う予定であった。 しかしながら、新型コロナウィルス感染症が終息しない中、アメリカへの渡航が制限されたため、これらの現地調査は全て実施できなかった。代替措置として、イリノイ州およびシカゴ市が公表し、オンラインで入手可能な範囲で、両者の移民関連の施策をめぐる意思決定の経過と実施状況についての情報収集を行い、2021年度以降に延期することとなった現地調査のための土台作りを行った。 2020年は大統領選挙の年であったため、前政権が激化させ続けた連邦・州・地方政体の間の対立と、現政権が目指そうとした異なる政体間の協働という、真逆の方向に向けての動きが顕著に現れた。特に、移民に対する抑圧的な施策に加えて、アフリカ系マイノリティへの暴力的な行動が繰り返されたため、「黒人の命は大切だ(BLM)」という運動が全国的に展開した。移民への立ち位置を中心に、アメリカ社会の長期的な変容の方向性を分析することを目指した課題ではあるが、BLMが社会的・政治的権利を求めて発信した影響力がアメリカ社会に浸透していった意味は大きく、移民をめぐる課題とも通底するところがある。そうした側面を、今後の分析の中にも組み込んで検討していくこととした。 2020年度の中間的な成果の取りまとめに基づき、日本政治学会での報告と、紀要掲載の論文として2本の論稿を掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の蔓延の影響で、研究において重要な役割を持つ海外での聴き取り調査を実施することができなかった。このことが、全体の研究の進捗を大幅に遅らせる原因となっている。この件への対応は、今後の研究推進方策において言及する。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度にオンラインで収集した資料を継続的に収集することに加え、図書・雑誌論文の分析を進めることで、現地調査のための準備を整える。海外での調査が実施可能となった時点で、申請時の計画に沿って、多くの移民を抱えながらも、包摂ではなく対立の立場を継続しているアリゾナ州を対象として調査を開始する。具体的には、経年的に反移民政策を打ち出すアリゾナ州政府に関して、州民・非合法滞在の移民に対する施策の評価についての調査を行うと共に、移民の支援を行う市民団体に対する聴き取り調査を行う。また、州政府と対抗して移民を包摂する施策を実施しているツーソン市に移動し、州政府との政策的な確執の現状とそれに対する評価に関しての調査も行う。 また、当初の予定では2020年度に実施できているはずであった、異なる政体間での協働を推進しているリベラルな州・都市の相互の関係性と、その対極として取り組む本年度の事例の分析結果との対比を行うことは、2022年度以降の研究の方向性を微調整するためにも重要である。そのため、2020年度に予定しながら延期となっている調査のうち、シカゴ市とイリノイ州政府に関する聴き取り調査に関しては、2021年度内に可能な限り並行して実施する予定である。 また、中間的な取りまとめとして、本年度の調査に基づく分析結果を雑誌論文として公表していく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、海外での現地調査を実施することができなかったため。
|
Research Products
(4 results)