2021 Fiscal Year Research-status Report
Search for Common Ground out of US Inter-Governmental Conflicts
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20K01461
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大津留 智恵子 関西大学, 法学部, 教授 (20194219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アメリカ政治 / 連邦制度 / 連邦・州・地方の協働 / 市民社会 / 分断化 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も新型コロナウィルス感染症が終息せず、アメリカへの渡航および対人的な接触が制限された。そのため、延期していたイリノイ州およびワシントンDCでの調査だけでなく、本年度予定のアリゾナ州での調査も含め、現地での調査が全て実施できなかった。 そのため、前年度と同様にイリノイ州およびシカゴ市の移民関連の施策をめぐる意思決定の経過と実施状況に関する資料を、可能な範囲でオンラインにより収集することを試みた。しかし州や地方政体に関しては、現地で生じる課題やそれをめぐる対応の詳細を理解するという意味では限界があった。またアリゾナ州では新たな対象機関への協力を依頼する予定であったため、オンラインのみでの調査には困難が伴った。また、研究期間を通してコロナ禍が人の移動を制約する状況であったため、調査対象である移民の動きそのものも制限を受け、情報を収集することに遅れが生じた。 現地を対象とした調査が制約されたことを受け、アメリカでの連邦・州・地方政体の協働に関する最新の研究動向を補完的に収集することにした。具体的には、大学機関や研究所、シンクタンクおよび移民を支援するNPOが実施するオンラインの研究会や討論会に参加し、可能な限り現地の情報に近いものを入手できるよう試みた。それらと並行して、関連する書籍・論文を用いての調査研究を実施した。2021年度は、2022年から使用される連邦下院の議席数変更が発表され、州政府が選挙区割りを変更する時期にあたった。そのため、本課題が分析対象とする各政体間の対立と協働の二つの流れが、各政治単位の党派的勢力の分布と呼応する形で示された。協働型の政策形成の土台となる政治的アクターの相互関係は、新たな選挙区の元で各政治単位で実施される選挙結果と呼応するため、具体的な選挙区割りの動向についての分析も行った。 中間的成果の取りまとめとして、2本の論文発表と学会での報告を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の蔓延の影響で、研究において重要な役割を持つ海外での聴き取り調査を2年続けて実施することができなかった。このことが、全体の研究の進捗を大幅に遅らせる原因となっている。この遅れへの対応は、今後の研究推進方策において言及する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2年ぶりに現地調査が可能になる予定である。2020年度、2021年度と収集した資料およびオンラインで入手した情報などの分析に基づき、現地での調査対象との打ち合わせを開始する。 コロナ禍での行動制限の状況を踏まえながら、2022年度はまず2021年度に実施するはずであったアリゾナ州を対象として調査を開始する。アリゾナ州の特徴は、多くの移民を抱えながらも、共和党のもとで包摂ではなく対立の立場を継続している点にある。具体的には、経年的に反移民政策を打ち出すアリゾナ州政府に関して、州民・非合法滞在の移民に対する施策の評価についての調査を行うと共に、移民の支援を行う市民団体に対する聴き取り調査を行う。また、州政府と対抗して移民を包摂する施策を実施しているツーソン市にも移動し、州政府との政策的な確執の現状とそれに対する評価に関しての調査も行う。 当初の予定では2020年度に実施するはずであった、異なる政体間での協働を推進しているリベラルな州・都市の相互の関係性に関しては、アリゾナ州での調査結果とは対極的になることが想定される。そのため、可能であれば時期をずらさず、2022年度末にかけて2回目の現地調査を実施したい。具体的には、シカゴ市とイリノイ州政府に関する聴き取り調査を予定している。 調査の遅れが2年間にわたったため、当初予定している前半の総括はできないものの、2022年度の調査に基づく分析結果を中間的な取りまとめとして雑誌論文として公表していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していた海外調査を全く実施することができなかったため。2022年度は過年度の調査もあわせて実施していく予定としている。
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Research Products
(4 results)