2022 Fiscal Year Research-status Report
民主主義理論における未来―権力・責務・代表の時間論的な再考察を通じて
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20K01463
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
鵜飼 健史 西南学院大学, 法学部, 教授 (60705820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民主主義 / 時間 / 政治権力 / 政治責任 / 民衆 / 未来 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民衆による自己統治としての民主主義が、未来といかなる理論的な関係にあるのかを考察する。この課題は、民主主義が「いつ」成立し、「いつ」を目的として、「いつ」の民衆によって担われるのかという、民主主義の成立可能性の根本にかかわる。すなわち、民主主義の危機が叫ばれる政治情勢で、民主主義原理に関する考察を通じて、その危機への理論的な対応を試みる。本研究では、権力論、責務論、そして代表論などの政治理論研究の諸課題が、時間的な観点から再考察され、未来の想定の特質が論及される。本研究は、政治理論における未来理解が孕む権力性とともに、それを組み込んだ民主主義や私たち政治主体の特徴を論じて、現代社会の理解に貢献する。民主主義の時間的な特徴を明らかにすることは、政治体制としての民主主義の固有性のみならず、なぜ現代民主主義がかくも時制(過去と未来)に執着するのかを理論的に説明する。 当該年度では、政治学における代表概念の分析を行った。政治的代表論において、近年代表における政治主体の構築的な作用への注目が高まっており、その中で将来世代の代表が論じられつつある。本研究では、将来世代の代表論に関して詳細に分析を進めて、そこで未来がどのようなものとして想定されているのかを自覚的に検討した。本研究が注目するのは、私たち現役世代と将来世代との「同一性」の形態であり、その評価自体が現実の政治闘争の産物だという事実である。前年度出版された拙著『政治責任』で展開された代表論をいっそう展開したかたちで、その時間的な性格について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、代表論の時間的な性格をおおむね検討することができた。海外での調査がやはり進展しなかったことが悔やまれる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度が最終年度になるため、本研究を出版する道筋を明確にしたい。また海外での資料調査を積極的に行い、国際レベルで通用する水準に、本研究を引き上げることを目標としたい。
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Causes of Carryover |
初年度にコロナ禍が主な理由で旅費を中心に、当初計画よりも使用額が少なくなった。次年度では、国際的な資料調査(イギリス、オーストラリア、台湾など)を計画しており、研究のいっそうの充実を図りたい。
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