2020 Fiscal Year Research-status Report
Testing pro-social hypothesis - Image analysis of Tokyo firebombing with machine learning
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20K01464
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
原田 勝孝 福岡大学, 経済学部, 准教授 (30738810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 岳 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 助教 (80773895)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モバイルデータ / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
比較政治において、これまでの研究では、災害が後世に負の遺産を残すという一般的な予想とは逆に、災害が人々の政治参加をむしろ促進する(以降、「向社会化仮説」と呼ぶ)という計量分析の結果が多くを占めてきた。本課題では、この結果が、専らサーベイ調査を基にした研究の蓄積による標本選択バイアス(誰が回答者に含まれるかで、原因と結果の関係性が変わること)に起因すると考え、行動ベースの信頼できる向社会化の指標となる従属変数の作成等を初年度の課題としていた。
これらの作業は、一旦始めると膨大な時間と費用がかかるため、方針の選定をは慎重に行った。当初、地理情報に紐付けられたサーベイ実験を用い、その結果を、個別の意見としてではなく一定範囲で集計することで標本選択バイアスの解消を図る予定であった。しかし、この方法だと、既存の研究との差別化の論点が技術的になり、貢献や意義が伝わりにくくなること、また、コロナ対策として特別定額給付金や持続化給付金、飲食店従事者への協力金等が支払われて、サーベイ実験の誘因である謝礼が与えるインセンティブの効果に大きく影響があった可能性が出てきた。
そこで、コロナ禍での人流観測でも注目を集めている携帯電話の移動情報データを用いて、行動ベースの向社会化の指標を作成する方針を決めた。データ販売業者は複数あり、それぞれのソリューションが異なるため、時間をかけて打ち合わせを行い、測定方法を決定し、業者を選定し、ソリューションを利用するための準備を進めた。この手法は、公式な統計では収集不可能な小規模な地理的区分における向社会化指標を提供するものであり、政治過程論に大きく貢献するものであると考えている。2021年度の研究成果発表の場として、日本政治学会ではパネル提案を行い、またアメリカ政治学会では独立論文として提案を行いいずれも採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文における結果と原因である、従属変数と独立変数の収集・作成方針が固まり、作業の実施においては、学生アルバイトも活用してきたため、研究成果を生み出す見通しがついた。一方で、自身が携わる他の課題やプロジェクトにもある程度時間を費やす必要があったため、成果が1年で論文として完成するほどの目覚ましい進展とは言えない。したがって、(2)おおむね順調に進展しているというのが適当であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021度は、従属変数である携帯電話の移動情報データを用いた行動ベースの向社会化指標の作成を完了し、その成果を用いた研究を論文の形にすること、そして、全国の戦災都市の航空写真に地理情報を付加する作業を進める。また、レガシースタディーと呼ばれる歴史的イベントの現代的帰結の研究動向もフォローし、論文執筆の際にインパクトのあるフレーミングを考えられるよう準備する。
秋からハーバード大学へ1年間、在外研究に向かうため、データ作成作業を行うアルバイトを雇えない可能性がある。現在、学内ルールに従い、勤怠管理担当者を探しているが、万が一、アルバイトを雇用できず研究遂行が滞った場合は、研究期間の延長申請をすることで対応したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた旅費を支出しなかったために、差額が生じた。元々、500万円で申請していた計画なので、差額については、当初予定していたデータセットの購入や、アルバイトの雇用により充実したデータを作成するために使用する。
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