2020 Fiscal Year Research-status Report
清末知識人と明治日本の政治学――東アジアにおける連鎖と比較の政治思想史
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20K01468
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
朱 琳 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40590203)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 梁啓超 / 清末知識人 / 明治日本の政治学 / 思想連鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題実施1年目に当たる本年度は、主に梁啓超が受容したと思われる明治日本の政治学の著作の収集に取り組んだ。梁啓超が論説でよく紹介した明治日本の思想家に、西周・福澤諭吉・加藤弘之・中江兆民・浮田和民・高田早苗・徳富蘇峰などの名がある。そして、日本経由で知見を得た西洋の思想家なら、ホッブス、スピノザ、ルソー、ベーコン、ディカルト、ダーウィン、モンテスキュー、ベンサム、キッド、アリストテレス、カント、ブルンチュリなどの名が挙げられる。梁啓超はとりわけ民友社同人と密接な関係にあったため、本年度は徳富蘇峰の関連著作および蘇峰主宰の『国民之友』・『国民新聞』に掲載された民友社同人の関連記事の整理・精読に力を入れた。これまでの先行研究ではそれほど注目されていない資料も入手することができた。「国民」・「メディア」・「進化」をキーワードに、徳富蘇峰、浮田和民、山路愛山などの政治関連の論説がいかに梁啓超に影響を与えたかを分析してみた。 そして、来日後、梁啓超は博聞強記で多岐にわたる学問についての知識を持つようになり、明治日本の思想状況の大枠を把握した上、関連の理論や学説を取捨選択し、同時代の中国の現状に適合する道を模索し始めた。部分的ではあるが、本年度はこの点にも目を配りながら資料の収集・分析を行った。 さらに、蘇峰の研究者との情報の共有および関連分野における最新の研究状況の理解にも努めた。 以上の作業により、次年度以降に向けた研究基盤の整備をある程度まで進めることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連資料の収集を通じ課題遂行のための基盤整備をある程度まで行うことができた。一方で、コロナの関係で、当初予定していた国内外における資料調査の一部を思う通りに実施することができなかったため、若干の次年度使用額が生じた。それを翌年度の調査時に充て有効に使用する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き基礎資料の収集・分析の作業を進めていく。梁啓超の著作だけでなく、梁啓超主宰の『清議報』・『新民叢報』に掲載された他の知識人の関連記事を手掛かりに清末知識人における明治日本の政治学の受容の状況の一端を明らかにする。さらに、彼らが明治日本の政治学から獲得した知識をどのように当時の中国社会に適用しようとしたのか、その試みをも併せて検討してみたい。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で研究活動の遂行に大きな影響が出ている。とりわけ国内・海外の出張、資料調査を行うことに困難が生じているため、次年度使用額が生じた。
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