2022 Fiscal Year Research-status Report
清末知識人と明治日本の政治学――東アジアにおける連鎖と比較の政治思想史
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20K01468
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
朱 琳 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40590203)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 梁啓超 / 明治日本の文明史 / 内藤湖南 / 「国際管理論」 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題実施3年目に当たる本年度は、主に下記の調査・解読・比較の作業を行った。 1、引き続き明治日本の政治学・文明史関連の資料の収集・分析の作業を進め、とりわけ東京専門学校出版部が出版した書籍や博文館の「帝国百科全書」シリーズ、『国民之友』・『国民新聞』における関連論説などに注目している。浮田和民の『史学通論』・『西洋上古史』、志賀重昂『地理学(完)』、高山林次郎『世界文明史』、桑原隲蔵『中等東洋史』などを再読し、彼らの観点を受容した際に梁啓超がどのような取捨選択を行ったのか、また、どのように現実の中国に適用するように必要な観点を自らの論説の中に織り交ぜたのかを考察してみた。 2、昨年度に作った文献リストに基づき、引き続き『清議報』・『新民叢報』に掲載された梁啓超の論説の解読に力を入れた結果、いくつかの新発見があった。また、近年の最新の研究成果にも目を配りながら、梁啓超研究の新たな可能性を模索してみた。 3、「国際管理論」をめぐる梁啓超と内藤湖南の応酬に着目し、両者の歴史観と政治観との異同を再考しようとした。『支那論』(1914年)・『新支那論』(1924年)のほか、内藤湖南「支那の国際管理」(1921年)、同「梁啓超氏の疆域論」(1922年)、同「梁啓超氏の非国際管理論を評す」(1922年)などを精読し、梁啓超の同時代の議論と併せて、議論の焦点の定め方や認識のすれ違いに注目している。 4、学界の最新の研究動向を知るために、海外の研究者と連絡を取り、オンライン開催の国際シンポジウムに積極的に参加して関連知識を吸収した。とりわけ蘇峰の研究者と頻繁に意見交換を行い、大変有益であった。現在、関連論文の執筆に取り組み、学会発表および投稿論文を準備している。 以上の作業により、確実に成果を出すように研究を進めていると言えよう。今後科研費の研究成果に基づき梁啓超関連の著書を出版するのを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連資料の収集を通じ課題遂行のための基盤整備をある程度まで行うことができた。一方で、当初予定していた国内外における資料調査の一部を思う通りに実施することができなかったため、若干の次年度使用額が生じた。それを翌年度の調査時に充て有効に使用する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎資料の収集はある程度までできたため、今後は解読・分析・比較の作業に重点を置きながら研究を進めていく。 梁啓超の著作だけでなく、梁啓超主宰の『清議報』・『新民叢報』に掲載された他の知識人の関連記事を手掛かりに清末知識人における明治日本の政治学の受容の状況の一端を明らかにする。さらに、彼らが明治日本の政治学から獲得した知識をどのように当時の中国社会に適用しようとしたのか、その試みをも併せて検討してみたい。 そして、ペンネームあるいは無署名で書かれた記事に重要なものもあるため、作者の特定作業も含め、関連論説の分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた旅費の一部は他機関の支出あるいは他の研究費で支払うことができたため、次年度使用額が生じた。
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