2023 Fiscal Year Research-status Report
清末知識人と明治日本の政治学――東アジアにおける連鎖と比較の政治思想史
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20K01468
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
朱 琳 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40590203)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 梁啓超 / 思想受容の時間差 / 知的構造の異同 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に下記の調査・分析の作業を実施した。 1、梁啓超に関する先行研究がかなり蓄積されている現状の下でどのように新しい突破口を見つけて研究をさらに深化させていくのかは大きな課題である。その基礎的な作業の一つとして、『梁啓超年譜長編』(全5巻、岩波書店、2004年)を読み直す作業から始まった。いままで気づかなかった箇所やヒントになる部分が多々あり、本文だけでなく詳細な註もとてもよい勉強になった。他の研究資料とともに活用している。 2、『梁啓超全集』(湯志鈞・湯仁沢編、全20巻、中国人民大学出版社、2018年)は梁啓超の作品を最も網羅的に収録した資料集である。原点にもどって明治思想の受容にかかわる梁啓超の文章を時系列に読み直し、梁啓超の思想的変化をたどってみたところ、新しい発見もあった。 3、梁啓超における明治思想の受容を検討する際に、日中両国における受容の時間差と知的構造の異同を再度確認し、当時日本と中国との政治的状況やそれぞれの国内世論に目を配りながら原因の解明を試みた。 4、学界の最新の研究動向を知るために、海外の研究者と連絡を取り、国際シンポジウムに積極的に参加して関連知識を吸収した。今年はとりわけ梁啓超・章炳麟の研究者と頻繁に意見交換を行い、大変有益であった。現在、関連論文の執筆に取り組み、学会発表および投稿論文を準備している。 以上の作業で確実に成果を出すように研究を進めているが、今後科研費の研究成果に基づき梁啓超関連の著書の出版を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた国際シンポジウムの主催および自らの研究発表を計画の変更によって実施できなかったため、若干の次年度使用額が生じた。研究期間の延長を申請し、それを翌年度の成果発表時に充て有効に使用する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
関連する基礎資料の収集はほほ完成し、分析の作業も一定の程度まで進めたため、今後は分析の精緻化を目指し、研究成果にまとめて発表する予定である。梁啓超一個人だけでなく、様々な立場に立つ彼周辺の他の知識人および清末民国初期の知的ネットワークにも注目し、清末知識人における明治日本の政治学の受容状況の一端を明らかにする。さらに、受容された明治日本の政治学が清末民国初期の中国社会とどう連動したかについても併せて検討してみる。
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Causes of Carryover |
理由:予定していた国際シンポジウムの主催および研究発表を事情によって延期になったこと、資料の精読・分析をはじめとして研究遂行に想定以上に時間を要したこと、の二点である。 使用計画:秋頃、梁啓超をテーマとする国際シンポジウムを主催し、研究発表を行う予定である。会議後活字化を目指す。
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