2021 Fiscal Year Research-status Report
原子力潜水艦の日本寄港問題に関する研究-1960年~1964年の時期を中心として
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20K01477
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 琢磨 九州大学, 法学研究院, 准教授 (20380660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本外交史 / 原子力潜水艦の寄港 / 核兵器の持ち込み / 日米安保体制 / 政治史・外交史 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、2020年度に考察した、(1)1961年6月にアメリカが日本に原潜寄港を打診した経緯、(2)アメリカによる寄港の再打診(1963年1月)後の外務省内での検討、(3)1963年の国会審議の推移について、引き続き事実関係の確定作業を行った。加えて2021年度は、(4)1964年に政府・与党が寄港を承認した経緯と同年の社会党の国会での対応を考察した。 2、上記の(1)~(4)の考察内容について、2021年9月24日に外交史研究会(日文研)で、2022年3月5日に楠田實資料研究会で報告し、参加者からコメントと助言をいただいた。 3、同時に、これまでの研究内容の公表に向けた作業を進めた。学会誌の査読者からのコメントと助言を踏まえ、原潜の寄港問題を捉える視点として、核兵器技術の発展とその一定の公開情報の存在という、本来は同盟内政治の外側にある要因が、日本政府に対米協調と国内政治への対応をめぐるジレンマをもたらしていた点に着目した。すなわち1964年の原潜寄港に至る過程では、(1)艦艇に搭載可能な核兵器の開発が急速に進んだこと、(2)新たな核兵器に関する情報を野党議員が公開情報を通して獲得し、それを国会で争点化したこと、(3)そのことが日米両国政府の対応を難しくしたこと、という複合的なダイナミクスが存在していた。これらの点に基づき、従来詳細が明らかでなかった64年の原潜寄港に至る経緯を再構成し、活字論文として公表した(「原子力潜水艦の日本寄港問題――核兵器技術の発展と同盟管理のジレンマ」『国際政治』)。 4、原潜の寄港問題にかかわった安藤吉光元アメリカ局長、および核兵器の持込み問題にかかわった東郷文彦元駐米大使、ライシャワー元駐日大使、東郷和彦元駐オランダ大使の口述記録を『アジア時報』(アジア調査会発行)で公表した。また、東郷文彦の認識に詳しい原彬久東京国際大学名誉教授へのインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・関係者の口述記録の整理と公開作業が、予定通り進んだことによる。 ・研究成果の一部を活字論文として公表したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
・アメリカからすれば、同盟国の信頼性を高めるはずの新たな核兵器の開発が、逆に日本の国内政治上の対応を難しくしたという政治的結果が生じていた。この点を踏まえながら、2022年度も引き続き、国会の審議過程と日米協議の内容の連関性について考察を進める必要がある。 ・1963年1月以降の国務省文書の読解を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
・出張旅費として予定していた額を、次年度に繰り越したため。
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