2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01478
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡崎 晴輝 九州大学, 法学研究院, 教授 (70380649)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多数派限定優遇 / 単記限定移譲 / 比例代表制 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究課題は、多数派限定優遇の比例代表制(PR-LMB)の説得力を高めるために、有力な代替案と比較分析することであった。この目的を達成するために、政権選択と民意反映を両立させる可能性のある選挙制度として、単記限定移譲の比例代表制(PR-LTV)というものを考案した。単記限定移譲式の比例代表制は、Contingent Vote の移譲メカニズムを比例代表制に適用したものである。議席は、第一選好に基づいて各政党に比例的に配分されるが、首相のポストは、CVの移譲式を活用して、絶対多数(又は絶対多数に近い相対多数)の票を獲得した政党の党首に与えられる。すなわち、どの政党も第一選好票の過半数を獲得できなかった場合には、大連立の可能性をチェックした後、上位二党以外の票を上位二党に移譲し、相対多数の票を獲得した政党の党首が首相になるようにする。こうすれば、有権者は首相を選択できるようになるであろう。しかしこの仕組みでは、有権者は首相は選択できても与党や政策は選択できない。そこで、有権者ではなく政党が選好を示す単記限定移譲の比例代表制(改良版)を考案した。この改良版では、有権者は首相だけでなく与党も選択できるようになるが、しかし依然として政策は選択できない。たしかに、単記限定移譲の比例代表制は多数派(限定)優遇を使用しないため民意反映という点では優れているが、政権選択という点では致命的な欠点を抱えている。この比較分析の結果、政権選択と民意反映を両立するためには、多数派限定優遇の比例代表制のほうが単記限定移譲の比例代表制よりも優れていることを理論的に示した。この研究成果は英語論文として公表し、海外の研究者に通知した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、多数派限定優遇の比例代表制の代替案を考案し、それを多数派限定優遇の比例代表制と比較する英語論文を執筆し、『政治研究』第68号で公刊することができた。また、当初の計画通り、九州大学リポジトリで同論文をインターネット公開し、海外の研究者に通知することもできた。ただし、当初の計画とは違い、新型コロナの関係で九州大学政治研究会で報告する機会は得られなかった。その代わり、九州大学比較政治学演習で報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では三つの問いを設定したが、<政権選択可能な比例代表制としては、単記移譲式を組み込んだ比例代表制も考えられる。どちらが優れているのか>という第一の問いについては、2020年度に答えを示すことができた。そこで2021年度は、当初の計画通り、<多数派優遇の比例代表制は、政権選択・民意反映に加えて、いかなる評価基準を満たす必要があるのか。そして、それらの評価基準を満たすためには、いかなる制度設計が必要になるのか>という第二の問いに取り組むことにしたい。その成果を英語論文として『政治研究』第69号で公刊するとともに、九州大学リポジトリでインターネット公開し、海外の研究者に通知したい。研究が順調に進めば、2022年度は、当初の計画通り、<多数派優遇は憲法違反にならないのか>という第三の問いに取り組むことにしたい。
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Causes of Carryover |
文献複写・郵送費や英文校閲費が予算額よりも安く済んだため、残額が生じた。現在のところ、次年度請求分の経費に含めて使用する予定である。
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Research Products
(1 results)