2020 Fiscal Year Research-status Report
日本人の防衛観と憲法意識に関する実験および歴史的分析
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20K01479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
境家 史郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70568419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法 / 国民投票 / 防衛政策 / 世論調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度ではまず、研究代表者がすでに収集していた、国民の憲法意識に関する世論調査データを包括的に分析し、その成果を政治学の専門雑誌に学術論文として発表した(共著「戦後日本人の憲法意識―世論調査集積法による分析」『年報政治学』2020-I)。当論文では、1940年代から2010年代まで、日本人の憲法改正についての志向(一般論として改正に賛成か、9条について改正に賛成か)の推移を示したものである。また当論文では、憲法に関する世論調査について、質問文のワーディングや調査機関の違いにが、回答結果にどのように影響するかという点についても検証している。
ついで当年度では、改憲の国民投票を模したWeb調査実験を実施した。まず、実験実施に向けて、国民投票に関する、あるいはWeb調査実験の手法に関する内外の先行研究を検討し、実験デザインの精密化を図った。その上で、令和3年1月に4000人を対象として実験を実施した。調査回答は予定通り収集が終わり、データもすでにクリーニングされ、分析に入ることができる段階にある。本実験では大きなサンプルを用意し、質の高いデータを得ることが可能となった。
また当年度では、(憲法9条に関するもの以外も含む)国民の防衛政策観に関する過去の世論調査のデータを一部収集した。この作業は、令和3年度から4年度にかけて取り組むと計画されていたが、前倒しして開始した。本年度では、政府、朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社が戦後に実施した世論調査の結果を網羅的に調べていき、おおむね1970年頃までについてデータベース化がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度には、改憲の国民投票を模したWeb調査実験を行うことを計画していた。当年度ではまず、実験実施に向けて、国民投票に関する、あるいはWeb調査実験の手法に関する内外の先行研究を検討し、実験デザインの精密化を図った。その上で、令和3年1月に4000人を対象として実験を実施した。調査回答は予定通り収集が終わり、データもすでにクリーニングされ、分析に入ることができる段階にある。なお、事前計画ではパイロット実験を実施する可能性があるとしていたが、本実験に十分な予算をかけるべきと判断したため、本実験しか行っていない。その代わり、本実験では大きなサンプルを用意し、質の高いデータを得ることが可能となった。
また、令和2年度には、国民の防衛政策観に関する過去の世論調査のデータを一部収集した。この課題は、令和3年度から4年度にかけて取り組むと計画されていたが、上記パイロット実験を取りやめたこともあり、前倒しして開始した。本年度では、政府、朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社が戦後に実施した世論調査の結果を網羅的に調べていき、おおむね1970年頃までについてデータベース化がなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には、前年度に実施した実験のデータを分析し、結果を報告していく予定である。広い政治学的文脈(世論研究の枠組み)の中に成果を位置づけ、学術論文としてまとめるのが、本研究の一義的な目標になる。しかし他方で、憲法改正問題は、日本の実社会における重要な関心事項であるから、総合雑誌のような一般市民向けの媒体にも適宜、分析結果の発表を行っていきたい。
また令和3年および4年度には、前年度に引き続き、国民の防衛政策観に関する過去の世論調査のデータを収集していく。政府および大手マスメディアの実施した世論調査を網羅的に調べていき、2020年までのデータベースを完成させたい。データセットの完成度がある程度高まった段階(令和4年度中)で、分析を開始し、戦後日本人の防衛観を実証的に跡付けていく。
令和5年度は分析内容の確定と結果の解釈に専念し、各時期のエリートレベルでの防衛論議と世論との対応関係について、また実験研究と既存世論調査の結果との整合性について検討を行う。以上すべての研究成果について、最終年度には関連学会で総括的な報告を行い、学術論文あるいは研究書としてまとめる。
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Research Products
(1 results)