2020 Fiscal Year Research-status Report
ロジックモデルと意思決定手法で予算の効率的かつ効果的運用を実現する行政評価の研究
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20K01480
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Research Institution | Suwa University of Science |
Principal Investigator |
飯田 洋市 公立諏訪東京理科大学, 共通・マネジメント教育センター, 教授 (80277269)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自治体評価 / 行政評価 / 住民参加型評価 / 集団合意形成 / 階層分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ロジックモデルと意思決定手法で予算の効率的かつ効果的運用を実現する評価法を開発することである。2020年度は、2019年10月に策定された「岡谷市商業活性化計画」を研究題材として、本研究の目的達成を目指した。具体的には、まずこの計画で2019年度に実施した重要度調査の見直しを行った。この調査は商業活性化計画を策定するにあたり、計画内に設けられた重点施策について、予算申請のための評価を行うためのものであった。そこでは、計画策定のために立ち上げられた岡谷市商業活性化会議の委員が重点施策の重要度と優先度の評価を行ったため、計画の目的や内容を十分に理解していることが前提での実施であった。そこで、この重要度調査を本研究で取り扱うために、新しく加入した商業活性化会議委員が同様の評価をできる工夫が求められた。 次に、その調査で活用した意思決定手法である階層分析法の活用方法の妥当性や有用性を検証するために、2020年12月に開催された「階層分析法の国際学会」で研究報告をした。オンラインで開催されたこの学会で研究報告をした結果、住民参加型評価への活用事例として評価されるとともに、評価尺度に関する助言を得ることができた。 そしてこれらを踏まえ、2021年3月に、商業活性化計画を策定してから一年が経過したことにあわせて、昨年度の重要度調査を見直した内容を反映した重要度調査を実施し、本研究が提案する手法で計画内の重点施策の相対評価を行った。 階層分析法を継続的な評価のツールとして活用した事例はほとんどなく、本年度に得られた結果は「総合計画」での継続的な活用を後押しするものといえた。また、今回の重点施策の評価者は商業活性化計画の策定に直接は関わらなかった人が多数を占めたことから、「総合計画」における施策の相対評価に近い状況で実施することができたといえ、これに関する知見を得ることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2019年4月に設立した「三市(岡谷市、諏訪市、茅野市)合同行政評価研究会」を母体に、今後策定される総合計画に組み込むことを目指し、ロジックモデルと意思決定手法で予算の効率的かつ効果的運用を実現する評価法を開発するものである。しかし、2020年度は新型コロナ感染症拡大の影響により、7月まではオンラインを活用するなどして研究会を継続したものの、研究目的を達成するための三市合同行政評価研究会による研究推進は困難な状況になった。そこで、2019年10月に策定された「岡谷市商業活性化計画」を新たな研究題材として、本研究の目的を達成することを目指すこととした。この計画では、次年度の予算申請につなげるための重点施策の相対評価が組み込まれ、研究代表者が中心となり意思決定手法を用いて実施した経緯がある。市の行政活動の主である「総合計画」とは施策のインパクトは異なるが、具体的な市の重点施策を対象に試行錯誤できる点は、「三市合同行政評価研究会」のメンバーである行政職員によるシミュレーションによる枠組みの策定よりも、実際的な研究が遂行できるとも考えられた。また、2019年度に質問紙によるアンケート調査による相対評価を実施していたので、継続性についても研究内容に取り組むことができるメリットとして考えられた。実際、2021年3月に実施した重要度調査の結果を、前回の調査の結果と比較しながら相対評価を決定できた。 以上のことから、研究対象とする施策が「総合計画」のものか市の一つの課が管轄するものかの違い、また、それの評価者が行政職員であるか住民であるかの違いはあったが、当初の研究目的に対しておおむね順調に研究が進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を立案した当初に予定した、行政評価に携わる行政職員からなる「三市(岡谷市、諏訪市、茅野市)合同行政評価研究会」を母体とした現場目線での研究推進は、新型コロナ感染症の影響が残る中、2021年度も難しい状況であるといえる。そこで、2020年度に実施した研究を継続させる方向で、「総合計画」で活用できる行政評価の枠組みの完成を目指すこととする。 ところで、岡谷市商業活性化会議では、2021年3月に開催された折に、この会議の下部組織としてすでに立ち上げてあるワーキンググループを市の商業者の声を反映させることを目的に本格的に稼働させることを決めた。そして、このワーキンググループの一つの役割として、より広範な立場にある商業者を巻き込むための岡谷商業活性化計画に関するアンケート調査の実施を決めた。一方、2021年4月に開催されたワーキンググループの会議では、次年度の予算申請に向けた岡谷活性化計画の重点施策について、より多くの商業者に重要度調査に参加してもらい、岡谷市商業活性化会議に報告することで最終的な相対評価に役立てられるようにすること、そのために本研究の一部としてアンケート調査を実施することが承認された。 以上の状況を踏まえ、2021年度は、多くの商業者を対象とする2回のアンケート調査を軸に、本研究の目的達成のために調整や実施をしていく計画でいる。また、2021年度の重要度調査は、ある意味で「住民」(当事者意識を持つ住民)による質問紙による行政評価を実施することになるため、「総合計画」の政策策定に直接かかわらない人の評価と位置付けることができる。この面から、「総合計画」における施策の予算編成を意識したメリハリある評価の枠組み作りに役立てられるように、「三市(岡谷市・諏訪市・茅野市)合同行政評価研究会」のメンバーに対して、これらの取組みへの助言をもらう計画を立てている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当該年度は新型コロナ感染症の影響で、人との接触を避けなければならなかったことと、国内外への出張ができなかったためである。ただし、それらを代替するものとして、遠隔で会議を行うための機器購入や、オンラインを活用した国際会議への参加を行っている。
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Research Products
(2 results)