2020 Fiscal Year Research-status Report
The "gateway model" analysis of the Washington power politics.
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20K01481
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Research Institution | Heisei International University |
Principal Investigator |
和田 修一 平成国際大学, 法学部, 教授 (30364863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前嶋 和弘 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (10350729)
林 孝宗 中央学院大学, 商学部, 講師 (40731451)
渡部 暢 京都大学, 経済学研究科, ジュニアリサーチャー (60851342)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アメリカ政治 / 政策決定 / アメリカ法 / シンクタンク / 企業の戦略的活動 / ゲートウェイ・モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
大統領・行政府と議会によって政策が決定される舞台(「政策決定アリーナ」)を取り囲んで、首都ワシントンではさまざまなアクター(団体や個人)が政策決定に影響を与えようと活動し、シンクタンクなどが主催するセミナーなどを通じてこれらアクター同士で政策論議も活発に行われている。政策決定アリーナを取り囲む空間を「政策コミュニティ」と名付け、この空間を通じたさまざまなアクターの活動を分析することが本研究の中心的命題である。 令和2年度には、主に4つの点から検討を行った。まず、分析枠組みとしての「ゲートウェイ・モデル」の議論である。「ゲートウェイ」とは、政策決定に影響を与えるための「入り口」に着目したもので、政策コミュニティを「入り口」として政策決定に直接・間接に影響を与えるという枠組みを、本研究の基本的視点として位置づけた。 第二が、政治資金規正についてである。アメリカ政治では、政治資金は選挙資金として位置づけられる。この選挙資金の規正や透明化のために1970年代以降、繰り返し改革が行われたが、新たな規制が設けられる度に「政治活動委員会」とよばれる合法的な団体が活動様式を変えて規制をくぐり抜けて、現在に至っているという課題を確認した。 第三が、政策決定へ影響を与えようとする企業活動の検討である。企業側から見た政治資金について、アメリカでは政治献金の透明化や企業活動の向上を目指すべきとの議論の一方で、社会的公正の観点から政治献金の法的根拠を見直すべきとの議論も行われていることも明らかにした。 最後が、中国の資金提供を受けてアメリカの大学に設置された中国語の語学教育組織「孔子学院」をめぐる議論である。トランプ政権が中国批判を強めていくのに対応して、孔子学院の活動に批判的議論が政策コミュニティでも目立つようになり、議会では規制のための立法活動も見られるようになったことを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目に当たる令和2年度は、①文献や資料に基づく各自の調査・研究、②研究会を通じた相互の議論、③4名のうち2名がアメリカで現地調査の実施、を3本柱に据えて取り組んだ。 このうち、文献や資料に基づいた調査・研究の面では、各自が順調に研究を進めており、メンバー間で議論を深めただけでなく、いくつかの具体的成果もあげている。 そのような中で、科研費の承認を受ける直前の令和2年3月に新型コロナが世界的大流行と宣言され、本研究もコロナ禍の影響を受けることになった。当初、東京にメンバーが集まって行う予定だった研究会も、緊急事態宣言や長距離移動の自粛で開催できないという事態に陥った。この対応策としてZoomを使ったオンラインでの議論で代替することとし、7月、8月に1回ずつと3月に2回、合計4回オンラインを通じた研究会を実施してメンバー間で議論を深めることができた。 令和2年度に実施できていないのが、アメリカでの現地調査である。アメリカでのコロナの感染被害は、日本でのそれをはるかに上回り、アメリカは入国規制を導入し、日本でも渡航自粛勧告が出された。本研究に着手した令和2年4月の時点では、令和3年春までには事態が改善しアメリカへの渡航が可能となるのではないかという期待を抱いていたが、改善に向かうどころか逆に日本では年明けに感染者増加の第三波を迎え、アメリカの入国規制も続いた。このため、ワシントンでの現地調査の年度内実施を諦め、次年度以降に先送りすることとし、その予算を繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、前年度に引き続いて①国内で各自が行う文献・資料に基づく調査・研究、②研究会を通じたメンバー間での議論、を実施する予定であり、成果がまとまり次第随時発表していきたい。 また申請時の計画では、令和3年度において2名がワシントンでの現地調査を行う予定になっている。令和2年度にコロナ禍のために現地調査が実施できずに先送りした2名と合わせて、渡航規制が解除され次第現地調査が実施できるよう、準備をしていきたい。 とは言え、令和3年4月現在で、コロナ禍に伴う国外渡航自粛やアメリカの入国規制が緩和される具体的なめどはまだ立っていない。そこで、文献や資料に基づいた国内での研究を一層充実させることにするとともに、オンラインを活用したアメリカの専門家との議論などの実施も検討して行きたい。
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Causes of Carryover |
申請時の計画では、令和2年度において2名がワシントンでの現地調査を行う予定になっていたが、コロナ禍に伴う渡航規制のためにそれを実施することができなかった。令和3年春ごろには事態が改善して令和2年度内にアメリカへの渡航が可能になるのではないかという楽観的な期待を年度当初においては抱いていたが、残念ながら事態は改善しなかった。このためワシントンでの現地調査を諦め、その予算を次年度に繰り越した。令和3年度において渡航規制等が解除され次第、この現地調査を実施する予定である。 また、コロナ禍に伴い国内での長距離移動も自粛せざるを得なかったため、メンバーが東京に集まって実施する予定だった研究会を、Zoomを利用してオンラインで実施した。これに伴い、会議費とそれに伴う国内旅費も未使用に終わった。一堂に会しての研究会がコロナ禍で令和3年度も実施できない場合には、再度オンライン方式で代替する予定である。また、現地調査を補う形で、国内での文献・資料調査に基づいた研究を計画よりも一層充実させていくことに加えて、オンラインを活用してアメリカの専門家と議論を行うことなども検討して行きたい。
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