2020 Fiscal Year Research-status Report
丸山眞男を中心とする共同研究「正統と異端」がもつ比較思想史学上の意義の究明
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20K01484
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
山辺 春彦 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (70638783)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 正統と異端 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下では、本研究の課題として設定した四点に即して、2020年度に行った研究実績の概要をそれぞれ記載する。第一の課題である東京女子大学丸山眞男文庫所蔵の丸山眞男旧蔵「正統と異端」研究会関係資料の調査研究と、第二の課題である同文庫所蔵の石田雄旧蔵「正統と異端」研究会関係資料の整理および調査研究に関しては、まずは両資料の全容を把握することに努めた。中性紙製ケースを用いて資料を一点一点区分けしながら、原所有者によって全体としてどのような整理がなされていたかを検討し、資料の作成に用いられた用紙やインク、整理用具などの把握を行った。以上の作業により、同資料の性質、内容、作成年代、成立状況といった基礎的な点について多くの情報を得ることができた。次に上記の第一・第二の課題における成果をもとに、「正統と異端」共同研究が全体としてどのような成果をあげたかを明らかにするという第三の課題について研究を進め、その成果として論文「初期の「正統と異端」研究会と丸山眞男の正統論」を執筆・公表した。これは、「正統と異端」共同研究の開始前と開始後で、丸山眞男の正統論がどのように変化したかを追跡し、その思想史的意義を明らかにしたものである。最後に、丸山文庫に所蔵されている「正統と異端」研究会関係資料のうち、重要なものを活字化して解説を付して公刊するという第四の課題については、「一九八七年七月二九日「正統と異端」研究会討論記録」の公刊に携わることができた。これは、1987年7月29日に開催された「正統と異端」研究会の音声記録のうち、討論の部分を文字に起こし、校訂を行い、注を付したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に記したように、本研究の課題として設定した四点それぞれについて、一定の実績をあげることができた。第一と第二の課題については、資料全体の概要を把握することができたため、今後の作業の見通しを立て、方向づけを行う地点にまで到達した。第三の課題に関しては、丸山眞男の正統論の変化という角度から「正統と異端」共同研究の成果を明らかにした論文を執筆するという成果をあげることができた。本論文の執筆を通じて、「正統と異端」共同研究の成果を分析する枠組みの設定と、新たな問題の提示を行った。第四の課題についても、「正統と異端」研究会資料を幅広い利用に供するという目的の一半を達成することができた。以上のように、現在のところ本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第一と第二の課題については、2020年度の作業で得られた知見をもとに、丸山眞男旧蔵および石田雄旧蔵「正統と異端」研究会関係資料の悉皆調査を開始する。資料一点一点について、記載内容や使用されている用紙やインクをもとに作成年代と作成目的を特定してデータベースに登録する。また、資料の内容分析を行い、「正統と異端」研究会での議論を再構築するための手がかりを蓄積していく。以上の作業を通じて、「正統と異端」研究会の成果を明らかにするという目的の達成を目指す。第二の課題については、2020年度の研究の過程で新たに浮上した論点についての研究を行う。2020年度の研究により、丸山眞男が「正統と異端」共同研究を行う過程で、福沢諭吉の思想を導きの糸の一つとしていたことが明らかになった。したがって今後は、丸山による福沢諭吉研究やその関連資料にまで視野を広げて調査研究を行っていく。第四の課題については、2020年度と同じく、丸山文庫所蔵の「正統と異端」研究会音声記録のうち重要なものを活字化し、刊行することを目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度の受領額と支出額の差引額が13,600円となった時点で、この額より単価の大きい図書を購入する必要が生じた。この図書購入のため、2020年度の差引額を次年度使用額とし、2021年度の受領額と合わせて支出する計画を立てた。
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Research Products
(2 results)