2021 Fiscal Year Research-status Report
独立調査委員会制度の比較研究 カナダ・旧英領諸国との比較分析と日本への制度的示唆
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20K01488
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
岡田 健太郎 愛知大学, 法学部, 准教授 (50641255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カナダ立憲君主制 / 王立委員会 / Governor General / 総督 / 州総督 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カナダなど旧英領諸国で幅広く用いられる独立調査委員会(王立委員会 Royal Commission, Commissions of Inquiry, Public Inquiry)制度について、その法的枠組みと政治的・社会的・歴史的役割を比較の視座から分析し、その制度的特徴や構造を明らかにすることを目的としている。この数年来コロナ禍の影響は甚大であり、現地調査やインタビュー、海外学会参加と報告ができない状況が続いているが、昨年度に引き続き、文献の収集や調査、資料の精査を中心に研究を進めた。 本研究ではこれまで特に、王立委員会の「王立」という部分に注目し、この制度が君主制に由来するものであることから、その点についての歴史的な分析を進めている。とくに、カナダをはじめひろく旧英領諸国で用いられる「Crown(王冠)」という概念に注目し、王立委員会をはじめとする統治の場面での用いられ方を念頭に置きつつ、王立委員会の役割と作用について考察を続けている。 カナダのみならず、旧英領諸国において王立委員会は形式上、総督(Governor General)が設置するものであり、実際の政治プロセスからやや離れたところに独立に存在する(あくまでも形式的には、であり、設置そのものを提案するのは内閣や首相である)。そのことを念頭に置きつつ、これまで総督、ひいては君主制に由来するこの制度の来歴に注目しながら研究を進めており、国民統合の象徴的役割を担う総督の「政治的」役割についても考察を深めることができた。今後は君主制に由来する政治・統治の制度である王立委員会の法的基盤である、カナダをはじめとする旧英領諸国における総督・州総督制度についてさらに分析を進め、イギリス法なども参照しつつ、王立委員会制度の全体像についての考察につなげていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象地域・国といった現地に渡航して調査やインタビュー等を行えない状況が続いているが、文献の収集や資料の精査を中心に研究を進めている。来年度以降、海外学会報告なども念頭に研究を進めていく。オンライン上での調査が中心となっているが、オンライン上でかなりの資料が収集できるということがわかった。カナダ連邦議会や各州議会の古い議事録のオンライン上での公開や、王立委員会資料のオンライン公開も新たになされており、それらをもとに研究を進めた。2020年以降、カナダでは王立委員会の設置権者である総督・州総督に関する政治的諸問題が立て続けに生じており、この点について研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現地での調査やインタビューを念頭に置きつつ、文献調査等を進めていきたい。コロナが終息した段階で、海外学会報告なども視野に入れて研究を続ける。
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Causes of Carryover |
研究開始初年度よりコロナ禍のため、海外現地調査を行うことができておらず、そのために旅費について次年度使用額が生じている。コロナ禍が落ち着き、海外現地調査や海外学会報告が可能となった段階で、次年度以降旅費等を執行していく予定である。
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