2021 Fiscal Year Research-status Report
Unforgettable memories among former Japanese Latin Americans who were taken as hostages by the U.S. government and the fight for seeking redress
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20K01491
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
賀川 真理 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10299018)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小山敦子さん / 内山宗一さん / 小山光昭さん / クリスタルシティ抑留所 / 日系ペルー人 / 強制連行 / 戦後補償 / 抑留所から日本へ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は依然として新型コロナウィルスの影響により、国外でのインタビューや資料(史料)調査といったフィールドワークが行なえなかった。そのため、当初予定していた研究実施計画のうち、戦後、1945年12月にアメリカによってテキサス州クリスタルシティに抑留されていた多くの日系ペルー人が日本に帰国もしくは到着し、その後居住されていることから、こうした方々と初めてコンタクトを取ることにした。 手元には、日本におられる元クリスタルシティ抑留所に抑留された日系ペルー人の方々の20年ほど前の名簿があり、それを手掛かりとし、かつカルメン・モチヅキさん(カリフォルニア州在住元日系ペルー人抑留者)からご紹介頂いた10人ほどに手紙を書き、本研究への協力を求めた。 そのうち住所不明で返却されたり返信がなかったりしたものが大半であったが、3人の方々と連絡を取り合うことができた。そのうち小山光昭さんの妻、小山敦子さんについて、研究論文を書いた。 実はアメリカでの日系ラテンアメリカ人に対する本格的な戦後補償交渉(モチヅキ裁判)では、戦後日本に帰国された家族も対象となり、その日本側の窓口になられたのが小山光昭さんであった。光昭さんは2018年10月に亡くなられたと敦子さんから連絡を受けたが、同時に研究への協力が出来るのであれば資料を貸して下さるとのことで、敦子さんとお会いし、光昭さんのことについてインタビューをさせて頂いた。その際、敦子さんご自身も元抑留者であることを知り、敦子さんご自身のことについて研究対象とさせて頂きたいと申し出たところご快諾頂いた。それから(再び新型コロナウィルスの感染症の発症者が増加し、緊急事態宣言などが発出されたこともあり)手紙や電話、インターネットでさらに詳細な事情を尋ねるなどして論文(『阪南論集・社会科学編』第57巻第2号、阪南大学学会、2022年3月刊行)を書き上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、上記のように小山敦子さん一家を中心としたケースを取り上げ論文にまとめたが、同じ時期にもうお二人から連絡を頂くことが出来た。そのうちの一人が随行繁房さんで、すでに最初に研究協力を依頼した際に同封した質問に対し、ご自身の家族のことやペルーでの生活、ペルー会(元日系ペルー人抑留者が日本やアメリカなどで行った集会)などのことを中心として、スペイン語(一部日本語)で文書を送って下さったほか、同じく元日系ペルー人抑留者田中百合子さんの半生が書かれた出版物、日本で補償交渉の運動が展開された時の新聞記事といった資料をお送り頂いている。もう一人は、市山マリ子さんの妹の姪に当たる中井まき子さんである。市山マリ子さんはすでに亡くなられていたが、抑留関係の資料の一部を引き継いでおり、そのうちのいくつかをメールに添付して頂いた。また必要であれば、市山マリ子さんの妹さんと連絡を取って下さることが可能であるなど、少しでも本研究に協力したいとの申し出を得ている(現時点では、インタビューは未実施)。 2022年度前半には、戦後日本に向かわれた元日系ペルー人抑留者のお二人目として、随行繁房さん一家のケースを取り上げるため、さらに補償交渉との係わりを尋ねるなどして論文を完成させる予定である。そして後半には、市山マリ子さんの妹さんに、直接会うことが可能か電話でのインタビューとなるかは不明であるが、ペルーでの生活から今日までの道のりを尋ねるなどして、市山マリ子さん一家のケースを取り上げたいと考えている。 さらに、小山光昭さんと小山敦子さんが保有されている資料を含め、他のアメリカの強制収容所とは異なるクリスタルシティ抑留所での生活実態に関する論文を、同所の家族名簿を手掛かりとして書きはじめており、海外でのフィールドワークについては実施できていないが、国内でできることはある程度形になりつつあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本研究課題に取り組む5年間のうちの3年目である。昨年までの2年間は、本務校の公務や授業計画の変更などで本腰を入れて研究することが難しかったが、今後はこれまでに得た知見を研究成果に結び付けていきたい。 具体的には、今年度はまず『阪南論集・社会科学編』第58巻第2号(阪南大学学会、2023年3月刊行)に、第二次世界大戦中にアメリカによって強制連行され、その後日本に行くことを余儀なくされた随行繁房さん一家のケースを取り上げる論文を書く。次いで『アメリカ研究』第57号(アメリカ学会、2023年3月刊行)に、第二次世界大戦中に設置されたアメリカの他の強制収容所とは異なるクリスタルシティ抑留所での日系人の生活実態について、当時抑留者たちによって出された家族名簿を手掛かりとして、個人情報に十分配慮しながら投稿したいと考えている。さらに随行さんと同様、戦後日本に行くことを余儀なくされた市山マリ子さん一家のケースについても、少なくとも妹の方とのインタビューを終えるところまでは辿り着きたい。 また、これまでにアメリカの国立公文書館で収集した史料をもとに、日系ラテンアメリカ人のアメリカへの強制連行の実態を究明するとともに、ペルー以外からアメリカに強制連行された日系ラテンアメリカ人の方々についての情報を収集したい。一方で、アメリカでの戦後補償交渉に携わった活動家の方々へのインタビューを続け、日系人への戦後補償に協力した他のエスニック・グループや関係団体の意向についても、できるだけ対面でのインタビューをしに行きたいと考えている。 これらを踏まえ、研究課題に取り組む最終年度には学会などで報告を行い、最終的には本研究課題の全容を明らかにした著書にまとめたい。これらの研究成果が、アメリカによる日系ラテンアメリカ人に対する強制連行の史実を日本とアメリカで広く知られる契機となることを期待する。
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Causes of Carryover |
2020年度と2021年度においては、国外での研究調査を予定していたが、新型コロナウイルスの感染者拡大に伴い緊急事態宣言が出るなどして、国外出張が一切認められなくなってしまったため、やむを得ず使用額に大きな相違が出ている。 今後、国外でのフィールド・ワークが可能になった際には、当初予定していた研究計画を実行したいと考えている。
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