2023 Fiscal Year Research-status Report
Unforgettable memories among former Japanese Latin Americans who were taken as hostages by the U.S. government and the fight for seeking redress
Project/Area Number |
20K01491
|
Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
賀川 真理 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10299018)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | クリスタルシティ抑留所 / カルメン・モチヅキさん / 家族名簿 / 抑留所における生活実態 / 戦後補償 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には論文を2本仕上げる予定を立てていた。具体的には8月末日が投稿期日の学会誌に「第二次世界大戦中にアメリカ政府によって連行された日系人抑留者たち―『オルーク報告書』と『家族名簿』から読み解くテキサス州クリスタルシティ抑留所の生活実態」と題し、また10月初旬が期日であった所属機関の紀要に「第二次世界大戦中に強制連行された日系ペルー人―ペルー、アメリカ、日本で暮らしたカルメン・モチヅキさんのケース」と題し、査読論文として投稿を試みるべく準備を進めていたが、結果的にはいずれも時間切れで完成原稿の提出には至らなかった。 しかし、その過程で成果報告の発表に向けてさらに多くの史料に接しすでにベースとなる論文の枠組みは整えられたと考えられることから、今後さらに事実関係の検証とアメリカ史の中での本問題の位置づけ、今日の世界情勢に照らした教訓などについて熟慮を行った上で、2024年度にはこれらの投稿と掲載を目指している。 後者に関しては、関係者へのインタビューを2度行なったほか、当事者から資料を拝借し、より正確な史実関係の記述に努めている。またこれまでに出来上がった原稿に誤りがないかどうかを確認していただく作業も進めている。 これらに加え、第二次世界大戦中に主としてペルーなどからアメリカのテキサス州クリスタルシティ抑留所に連行された家族のうち、戦後日本に向かい、その後日本に定住されてこられた方々が、1998年の「モチヅキ訴訟」による和解勧告で、どのような手続きを踏んで短期間のうちに申請を行い、和解金を受け取るに至ったのかについて、当事者から拝借した資料を基に分析を進めている。 これらにより、アメリカで行われた日系アメリカ人への戦後補償に、当初はその多くが除外された日系ラテンアメリカ人(その大半は日系ペルー人)がどのように関わることができたのかを明らかにすることができると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は2020年4月より開始されたもので、当初の計画では、第二次世界大戦中にアメリカによって、居住していたラテンアメリカ諸国からアメリカに連行され、テキサス州のクリスタルシティ抑留所に抑留された日系ラテンアメリカ人である当事者と、その後の戦後補償に関わられた関係者とのインビューをもとに行う計画を立てていた。その際の当事者はアメリカ在住の方々で、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、事実上、海外渡航が禁止されたことで、研究の初年度から約3年近く対象となる調査ができないままでいた。またその間に、当初アメリカでインタビューを予定していた二人の方が亡くなられた。 しかしその間にできることはないかと模索した結果、同様の境遇で日本におられる方々にインタビューをすることを考えたものの、国内における感染症も猛威を振るい、当事者に直接インタビューを行うことが難しかったことから研究に遅れが生じ、その後の研究がずれこんでしまったことが影響している。 今後は、現在までに得た情報や資料を基に研究時間を確保して、本年度は2本の論文執筆を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
第二次世界大戦当時、クリスタルシティ抑留所に抑留され、当時の記憶を持っておられる方々はすでに90歳前後の方々で、これ以上、インタビューの対象者を増やすことは難しいと考えている。 本件はアメリカ史の大きな出来事であるにもかかわらず、アメリカや日本でもまだほとんど知られていない。そのため、本課題研究についてこれまでにナショナル・アーカイブスにおける史料調査で確認した史実や新たにわかった事象を再度検証し、当事者に対するインタビューの成果などを踏まえ、1942年から今日に至るまでアメリカ政府によって一家の生活の自由を奪われて「人質」となり、アメリカ、日本、ペルーなどで暮らしてこられた日系ラテンアメリカ人の存在について、今日の世界情勢への教訓としても、明らかにしていきたいと考える。
|
Causes of Carryover |
前述のように、新型コロナウイルスの蔓延により国内外での研究機会は研究開始より3年近く得られなかったため、本研究計画の大半を占めている旅費が使用できない状況にあった。それでも2023年度には、本務校における公務や行事の合間を縫って、2回調査研究の機会を得ることができた。 次年度使用額が生じた理由については、このように2020年度以降の当初計画が大幅にずれ込んだためであり、2023年度の調査研究自体は比較的順調に進められたと考える。 今後の研究期間においては、さらに計画的に予定を執行できるように進めていきたい。
|