2020 Fiscal Year Research-status Report
Politics of EBM as an idea
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20K01492
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
宗前 清貞 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (50325825)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医療制度 / 福祉国家 / EBM |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、EBMが成立する経緯について概要を理解することに務めた。もっぱら医学および医療制度に関連する書籍において、1980年代に浮上したEBMの成立プロセスの概要や背景に関する情報を収集し、なぜEBMが登場したのか、医療関係者にとって当初EBMはなんのために着手されていたのかを整理した。特に、初期EBM導入のプロセスにおいて医療関係者から生じた反発は、医療の標準化が画一化をもたらし、専門職である医師の最良を束縛するものであるとの批判が多く寄せられていた。その後にEBMに対して寄せられた医療関係者の反発は、医療経済至上主義ないしそれに類するものが多かったが、当初はそうした批判があまり強いものでなかった点は想定とことなる発見であった。
時代は異なるが、近年(特に2010年代以後)、EBMが浸透したことの結果として、そのアナロジーであるEBPM(根拠に基づく政策立案)に関する知見を深めることができた。これは「EB(根拠に基づく)」というアイディアが、一般に望ましいものとして受け止められたことの反映であり、とりわけ官邸が強化された2000年以後の政治運営に対する「批判的言説」として浮上している点が興味深い。
蓄積した研究の出力面では、20年8月に日本医療政策機構においてウェビナー講師として登壇し、現役の医療関係者から多くの質疑応答を受けた。さらに20年12月には日本公共政策学会関西支部の定期研究会に登壇し、日本の医療制度を歴史的に分析することの意義および現代の医療制度の特性(EBM含む)について発表し、会員から活発な質疑と討論を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の重要なインフォーマントである厚生労働省の医系技官(審議官級)から、研究自体には積極的な協力の承諾を得ていたが、(1)職務上、他県からの来訪者と直接会って会話することを極力回避せざるを得ないこと(2)ZOOM等のオンラインでインタビューする予定であったが、度重なる感染拡大に際し、対応の責任者として時間が取れなくなってしまった。さらに、20年度は本務である教育面でオンライン対応を強いられたり、病気休職者の担当ゼミを急遽分担するなど、本来この研究に振り向けるべきエフォートの余地がなくなってしまったことから、研究初年度より進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗自体は遅れているが、21年度中にはワクチン接種の進展とともに当該インフォーマントから情報提供を得られる見込みである。また、仮にこれが遅れた場合に備え、EBMの裏面として、医療制度の冗長性(=機能重複など)についても探求を進めている。この探求は21年5月開催の日本行政学会・共通論題で発表する予定であり、EBMを単に効率化の延長線上に捉えるのではなく、安全性や医療提供の標準化の一環として理解するためのステップとしたい。
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Causes of Carryover |
出張旅行がすべて中止となり、図書購入やオンライン会議機材等の出費はあったが、それでも当初出費予定より低くなった。余剰は2021年度の支出を予定しているが、最終年度である22年度への繰越、あるいは感染状況によっては最終年度での残額返還も考えている。
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