2020 Fiscal Year Research-status Report
ハプスブルク帝国存続派から見たウィルソンの「14ヶ条」
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20K01509
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
馬場 優 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40449533)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハプスブルク帝国 / オーストリア=ハンガリー帝国 / オーストリア / 民族自決 / 14ヵ条 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1次世界大戦末期の1918年1月にアメリカ大統領W.ウィルソンの「14ヵ条」がハプスブルク帝国(=オーストリア=ハンガリー帝国)に与えた影響を、これまでのような帝国からの独立を目指す各民族勢力からではなく、帝国を存続させようとしていた国家指導者たちの視点から検討することを主たる目標とする本研究において、本年度は、(1)先行研究の収集と整理を行い、また(2)研究会への参加を通じて研究課題を深める知見を得た。 先行研究の収集と整理について。本年度は先行研究の収集と整理をおこなったが、なかでもオーストリア研究者H.ルンプラーの研究業績の分析を通じて、第1次世界大戦勃発以前の1914年初頭から1918年11月のハプスブルク帝国崩壊までの時期にオーストリアの歴代政権がいかなる国家体制改革を検討してきたのかの全貌が明らかになったことは、大きな収穫であった(Helmut Rumpler, "Die Todeskrise Cisleithaniens 1911-1918. Vom Primat der Innespolitik zum Primat der Kriegsentscheidung", in: Die Habsburgermonarchie 1848-1918, Bd.XI, Teil II, (Wien, 2016), S,1165-1256)。他方、彼がこの論文の中でオーストリア政府の各民族集団及び各民族系諸政党・帝国議会議員との関係に分析の重点を置いていることから、「14ヵ条」へのオーストリアの各政権の見解は不明瞭なまである。とはいえ、この論文を通じてさまざまな関連する文献の存在が分かり、その文献の収集をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、先行研究の収集と整理において順調に進んでいるといえる。しかし、目標のひとつであった2020年夏のオーストリアの国立公文書館での史料収集及び同史料の分析ができなかった。これは、いわゆる新型コロナウィルス感染症の世界的拡大のために、オーストリアへの渡航ができなかったことが原因である。この点から言えば、現在までの進捗状況は、やや遅れていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の先行研究分析から明らかになったハプスブルク帝国(=オーストリア=ハンガリー帝国)のオーストリア側のザイドラー政権及びフサレク政権の時代(1917年6月-1918年7月)に焦点を絞って先行研究を引き続きおこなうことで、帝国存続派の帝国改革案をまとめていく。その際、同時期のハプスブルク帝国(=オーストリア=ハンガリー帝国)全体の案件を担当する3つの共通省(共通外務省、共通戦争省、共通財務省)と帝国全体の君主であるカール、そしてカールの側近集団の帝国改革案も二次文献を使って輪郭を描くことを目指す。 なお、次年度は当初予定していたとおりオーストリアのHHStAでの史料収集及び分析を行う予定である。また、本年度実施できなかった現地調査も次年度に行う予定である。したがって、次年度は8-9月と2-3月の2回の現地調査を考えている。ただし新型コロナ感染症の状況に実際に現地を訪問することができるかが不明確であることは否定できない。したがって、場合によって次年度は、2-3月期に複数回現地調査をおこなわざるを得ないかもしれない。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大によりオーストリアでの史料調査を実行することができなくなったため。
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