2020 Fiscal Year Research-status Report
国際開発規範と途上国政治との摩擦に対する国連開発計画(UNDP)の調整役割
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20K01512
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
真嶋 麻子 日本大学, 国際関係学部, 助教 (60598548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 途上国開発 / 国連開発計画(UNDP) / 国際開発規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、途上国開発をめぐる対立における国際機関の調整役割について、とりわけ国際開発規範と発展途上国の国内政治との摩擦への国連開発計画(UNDP)による対応を検討することを目的としている。特に、調整役割を把握する手がかりとして、UNDPが途上国開発業務を現地化している現象に着目している。 本年度の成果の第一は、UNDPにおいて現地化政策が制度化された1970年代前半の理事会における審議状況を追跡し、制度化の背景にある先進国ドナー、発展途上国、UNDPそれぞれの利害関心を明らかにしたことである。これによって、制度化の過程のなかに、国連機関による先進諸国と発展途上国との間の利害対立の調整機能を確認することが可能になった。 第二に、現地化政策の運用実態を理解するために、発展途上国とりわけラテンアメリカ諸国における現地化政策の運用のデータを精査した。ラテンアメリカ地域では他地域と比べて群を抜いて現地化が進んでいる地域であり、軍政から民政への移行期や国内紛争から平和構築への移行期が、現地化に向かうターニングポイントとなっていることを改めて確認した。本年度は新型コロナウィルス感染拡大の下で資料収集のための研究出張への制約が大きく、主にインターネットから入手可能なUNDP内部文書を主に用いた分析を進めた。 そして第三に、持続可能な開発目標(SDGs)および「自然への権利」といった規範について、それが国際社会に提示(あるいは再提示)される過程のなかに、発展途上国による既存の国際規範に対する異議申し立てがあることを指摘する研究を行った。これは、本研究課題の現代的意義を抽出するための予備的作業であり、国際規範が現地化される際の条件を探求することへとつながるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた2020年度の研究計画では、UNDP東京事務所ならびにニューヨークの国連アーカイブス(UNARMS)のそれぞれにおいて資料収集を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、国内および海外の研究出張の機会が制約され、この予定を推敲することができなかった。 他方で、インターネットで入手可能な資料収集とデータの分析については一定程度、進めることができた。本研究の課題である1970年代から80年代にかけてのチリとアルゼンチンにおける実践を例とした、UNDPが途上国開発業務を現地化することの運用過程について、入手可能な範囲での資料を用いて分析を進めている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度についても引き続き、国内外での出張が制約される可能性が高く、資料収集も当初の予定通りにはいかないことが予想される。したがって、すでに入手しているUNDP業務に関するデータの分析を進める。また、UNDP常駐代表とアルゼンチン外務省(軍政期1976~83年)との間で交わされた覚書や手紙を入手済みであり、これについても分析を進める。 また、本研究課題を研究史において俯瞰的に位置づけるために、国連開発機関への発展途上国からの影響に関する書評論文を執筆し、学会誌へ投稿する。加えて、近年の途上国開発をめぐる規範形成において、国連機関がどのような役割を果たしているのかを検討することを射程におき、持続可能な開発目標(SDGs)といった近年の開発規範の特徴についても検討する予定である。本研究課題が対象とする1970~80年代の国連機関の役割との比較も可能となるものと考える。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響で、予定していた国内外の出張に制約があり、また、国内の学会および研究会がオンライン開催されることも増えたため、旅費にかかる支出がなされなかった。海外ならびに国内の研究機関における新たな資料収集の機会が減った分、入手済みの資料やインターネットで入手可能な資料の分析を中心に進めたため、資料整理のための備品の購入をしたが、資料購入のための費用が発生しなかった。 したがって、本年度に使用しなかった助成金は次年度に使用するものとする。ただし国内外への出張にかかる旅費の使用は、社会情勢が許す範囲になることが予想される。また、学会ならびに研究会への出席がオンライン化するなかで、オンライン会議に対応するための備品購入や、オンライン書籍といった形での研究費の使用を予定している。
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Research Products
(5 results)