2021 Fiscal Year Research-status Report
日韓の民主化支援:国際規範と国内制度の相互作用に関する研究
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20K01516
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
金 孝淑 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (50708443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
David Potter 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00329757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民主化の促進 / 日本 / 韓国 / 民主化支援 / 国際規範 / 国際協力 / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究期間内に①国際規範としての「民主化の促進」と新興国による民主化支援に関する先行研究の分析と整理、②日本と韓国における「民主化の促進」規範の制度化の現状と民主化支援の具体的事例調査の二点を実施する計画である。研究2年目にあたる本年度は、②の具体的事例を選定するための調査、研究を重点的に行った。まず、研究代表者と研究分担者はそれぞれ韓国によるコンゴ民主共和国への選挙支援と日本によるミャンマーへの民主化支援について調査を進めた。また、その成果をウェビナーや研究の打ち合わせにおいて共有し、共通の事例選定のための議論を重ねた。その成果は、以下の通りである。 1)韓国による「民主化の促進」の取り組みとして「世界選挙機関協議会」の設立と運営における同国の強い関与実態を調査し、2017年に発覚した「コンゴ民主共和国への投票機輸出に関わる政治スキャンダル」との関連性を明らかにした。同研究成果は、研究代表者が執筆した書籍の一つの章として出版した。 2)本研究の事例として対ミャンマー民主化支援を選定し、これまで国際選挙支援に限定していた両国による民主化支援をより広くとらえる分析を開始、その初歩的成果を国際会議で発表した。日韓両国は2011年以降共通してミャンマーに対する政府開発援助を積極的に実施することで、同国の経済発展と民主化の促進を支援してきたが、2021年の軍事クーデターに対しては、政府としての対応にも、市民社会の反応にも明確な違いが見られることを指摘した。なお、日本の対ミャンマー民主化支援に関しては、研究分担者がその研究成果を取りまとめ、2冊の編集書において各1章、計2つの章として出版した。 なお、昨年度同様に本年度も現地調査の実施を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、実行できず、文献調査やオンライン上で入手可能な資料で研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、①資料の内容分析に加え、②その成果の報告と③現地調査を予定していた。①分析のための資料は、本来2020年度に実施する現地調査で入手予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大により、海外・国内出張ともに実現できなかった。そのため、主にオンラインで入手した国会会議録や政府発行報告書・政策文書、新聞記事等を読み進めていった。なお、2021年度においても、関連論文と書籍を随時海外から取り寄せるなどし、文献サーベイを継続して実施した。②途中で得られた研究成果の報告は、オンラインで実施された国際会議やウェビナーにて計3回実施できた。発表は全て研究代表者と研究分担者が共同で行い、途中研究成果の発信と今後更に研究を発展させるためのコメントと質問を受けることができた。また、当初は計画していなかったが、研究成果を出版することができ、計3冊の編集書において各1章、計3つの章を執筆し、出版できた。③現地調査に関しては、2020年度同様に新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外・国内出張が困難な状況が続き、実現できなかった。なお、研究代表者と研究分担者の打ち合わせも対面での実施はできなかった。ただし、Zoom、電話、SNS、メール等の手段を使い、意見交換と議論を重ねた。これらの状況を総合し、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度にあたる2022年度においては、本研究の事例として選定したミャンマーへの民主化支援と2021年2月に同国で発生した軍事クーデターに対する日韓の対応を調査・分析する。これとともに、これまで国際選挙支援に限定してきた民主化支援の分析対象を修正し、より広い意味での民主化支援をとらえるための主要概念・分析枠組みの再整備にも取り組む。最終的にはこれらを通じて、日韓の民主化支援が既存の「民主化の促進」のための国際協力体制の維持・強化に示唆する点を考察し、その結果を取りまとめ、発表していく。既に国際会議(オンラインでの実施)での研究報告が決定しているが、可能な限り複数の発表を実施し、研究成果の更なる発信にも力を入れたい。 また、現地調査の実施は当初2022年度の研究計画に含まれていなかったが、研究初年度より実現できていない状況を考慮し、日本(東京)と韓国(ソウル)にて現地調査を実施したいと考えている。加えて、研究代表者と研究分担者との情報共有と議論をさらに深めるためにも、対面での研究打ち合わせを実施する予定である。ただし、今後の新型コロナウィルスの感染拡大状況により対面での研究活動が不可能な場合は、引き続きオンラインで実施可能な調査、研究を進めていく計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、海外出張はもちろん、国内出張も実行できなかった。そのため、当初旅費として計上していた経費を使用できなかった。2022年度においても新型コロナウィルスの感染拡大状況が見通せず、国内・海外出張が実現できるか不透明である。また、学会やセミナー等がオンラインで実施されるようになっているため、研究成果報告のための旅費も使用できない可能性が高い。そのため、研究期間の延長を考慮しなければならないと考えている。
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