2020 Fiscal Year Research-status Report
新興国の「南南多国間主義」は国際開発援助を変えるか
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20K01521
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
近藤 久洋 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (20385959)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新興国 / 南南人道主義 / 国際人道レジーム / 規範 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、新興国が国際政治経済においてプレゼンスを高めるのと比例するように、新興国は国際開発援助においても注目を集めるようになっている。国際開発援助における新興国の台頭は、二国間援助だけでなく、アジアインフラ投資銀行(AIIB)・新開発銀行(NDBもしくはBRICS銀行)・「一帯一路」のような新たな多国間援助の制度化においても顕著である。新興国は多国間援助の「受け手」から「送り手」に変容し、伝統的多国間主義の「利用者」から新たな「南南多国間主義」の「形成者」に変化してきている。本研究は、新興国の多国間援助に焦点を絞り、「新興国の『南南多国間主義』は国際開発援助を変えるか」という大きな問いを扱う。具体的には、(1) 新興国が形成しつつある多国間援助を説明するため「南南多国間主義」(south-south multilateralism)という概念を提示し、その多様性をモデル化し、(2) 「南南多国間主義」が形成されたダイナミズムを究明し、(3) 「南南多国間主義」が既存の国際援助レジームに及ぼすインパクト等、今後の多国間援助への政策的含意を導く。 2020年度には、南アフリカにおける現地調査を実施することを予定していたが、新型コロナ感染症のパンデミックに伴う情勢により断念した。 代わって、2020年9月に国連ESCAPにおける報告者を務めることになり、日本・新興国のコロナ支援に関する報告のため、夏季休暇を含め4ヶ月をESCAP報告の準備に費やした。その準備により、日本・中国のコロナ支援に関する文献収集・分析を行い、ESCAP報告では新興国によるコロナ分野における南南協力を含めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査1件を予定していた2020年9月は、新型コロナの大流行に伴い、海外渡航すら実質的に不可能な情勢であった。同時に国連ESCAPにおける報告をすること が必要になったため。この国連会合での報告には、4ヶ月の準備期間を要し、国連会議終了後も、国連ESCAP Policy Briefの公刊の準備をすることになった。 ただし、現地調査を実施できなかったものの、ESCAP報告・国連会議報告集・ESCAP Policy Briefでは日本・新興国のコロナ支援・人道支援に関する自身の論 考も公表することができており、論文発表(英語1件(査読あり))、国連ESCAPでの口頭発表2件と、研究成果としては予定以上であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施予定であった南アフリカの南南協力に関する現地調査を行うこととする。但し、調査対象地は新型コロナウイルスの感染状況に応じて、柔軟に変更することとしたい。なお、調査項目については、当初の実施計画から変更はない。
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Causes of Carryover |
海外現地調査が取りやめとなり、海外調査のための旅費・謝金の支出を伴う研究活動ができなかったため。 2021年度には、南アフリカにおける現地調査を実施し、南アフリカの南南協力に関する情報を収集し、研究成果として取りまとめる。
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Research Products
(3 results)