2020 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ外交における国際的信教の自由の政策形成と展開
Project/Area Number |
20K01523
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (40315859)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アメリカ / 国際的信教の自由 / 国際宗教委員会 / IRFA / 人権 / グローバル・マグニツキー法 / トランプ政権 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度(2020年度)は、新型コロナウィルス感染拡大防止の影響による海外渡航規制が継続したため、当初予定していた海外出張が実現できず、オンラインによる情報収集と会合等への参加を行い、研究の進展を図った。 ポーランドのワルシャワで開催された第3回国際的信教の自由閣僚会議及び多くの民間団体が主催した関連会議を参与観察した他、諸外国の国際的信教の自由の問題に関する情報交換が行われる米政府機関と市民団体の対話(会合)に参加した。米国の国際的信教の自由法に基づいて設置された独立機関の国際的信教の自由委員会が実施した公聴会や発表した各報告書、米国務省が公表した国別人権報告書、米連邦議会で審議された国際的信教の自由に関係する法案に注目し、とりわけアジア地域の問題を中心とした情報整理を行なっている。2020年は米大統領選挙により党派的分断が際立たち、トランプ政権下で政治的分断がいっそう憎悪的に進んだことが国内外のメディアで強調されたが、連邦議会における国際的信教の自由に関するに法案審議は、筆者が従来から主張している通り超党派で動いていることを再確認することができた。また、宗教的マイノリティーに対する差別問題や思想信条の自由の問題に取り組む複数の団体の活動を参与観察し、彼らが取り組む女性のエンパワーメントプログラムやビジネスと人権に関する企業行動についての情報収集にも着手した。その過程で彼らが実践している世界人権宣言18条(思想、良心および宗教の自由の権利)の啓発活動プログラムに参加する機会に恵まれ、その体験を通して活動内容や思想について調査を進めることができた。研究成果としては、トランプ政権が外交政策において推進した国際的信教の自由のための政策の特性として、異なる思想信条の自由が保障された労働環境と企業利益の関係を重視する考え方が見出せることを指摘した研究発表を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の進捗状況については、当初の研究計画通りに進めることができなかった面があることは否めない。しかしながら、入手できた重要な情報や資料から新しい視点を得ることができたこと、オンライン会議の利点を生かして多くの研究者やNGO/NPOの方々と意見交換することができたこと、彼らと構築できたネットワークが今後の研究環境にも有益であること、そのネットワークを通じて一次情報にアクセスできる環境が整ってきた点などから、研究は滞ることなくまずは順調に進展していると言えよう。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も新型コロナウィルスの感染拡大の影響による行動自粛や渡航制限が続くことを想定しておく必要がある。海外での現地調査が難しい状況が続くようであれば、引き続きオンライン会議を活用した研究調査を実行していくこととしたい。当初の年度ごとの計画内容をそのまま実施することが困難となる見通しも立つため、研究計画の全体において計画を遂行できることを重視し、1年ごとに柔軟な調整を図りながら研究を遂行していきたい。次年度は、米国が国際的信教の自由の促進を外交政策において制度化した背景、その制度設計の内容についてトランプ政権とバイデン政権を比較検討すること、諸外国の信教の自由に狙いを定めたいくつかの法案について米連邦議会の審議を検証することを進める予定である。
|
Causes of Carryover |
当初は、アメリカにおいて聞き取り調査を実施する計画を立てており、そのための旅費と現地での資料収集や謝金を計上していた。しかしながら新型コロナウィルス感染拡大により海外渡航ができなくなったため、次年度使用額が生じてしまった。繰越した分は、今後の研究計画において実施する出張調査、資料収集、海外学会での成果発表等のための助成金と合わせて適正に使用していく。
|
Research Products
(2 results)