2021 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ外交における国際的信教の自由の政策形成と展開
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20K01523
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (40315859)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際的信教の自由 / 宗教迫害 / USCIRF / IRFA / 人権団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アメリカが宗教的自由の促進を対外政策の中枢に据えることを定めた「国際的信教の自由法」の形成過程および政策の具現化を実証的に解明することを目指す。アメリカの外交政策立案者や人権擁護NGOには、宗教的自由は市民社会を支える「普遍的人権」であり、宗教と国家の共生を可能にし、安全保障上の脅威に対処するツールであるとの認識が存在する。 2021年度は、前年度から続く新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として渡航制限があり当初計画した海外調査を実施できなかったが、オンラインの各種会合への参加や参与観察により宗教的自由の促進を重視する外交エリートや市民団体と意見交換や情報交換を行い、知見を得た。バイデン政権は国際的宗教自由大使に初のイスラム教徒を任命し、前政権が政府主催で毎年開催した宗教的自由外相会議をやめ、民主主義サミットを行うなど前政権からの変化を鮮明にした。だが、前政権で築かれた国務省担当部局と市民団体や宗教コミュニティとの連携が継続している関係性にも注意し、宗教的自由の侵害で制裁対象に指定すべき対象者を選定する判断基準、特定の問題や個人について展開するキャンペーン手法などの検討を進めている。 研究成果としては、講演や公開講座等の他、ショートフィルム作品の制作・発表を行なった。情報分析から得た知見を取り入れた作品ショート・フィルム“A Call To Lead”を制作して国際フィルム・コンペ(Empower Women MediaとReligious Freedom & Business Foundationの共催)に出品し、Presidential Global Challenge Film Awardを受賞した。海外メディアで取り上げられ、国際イベントDare to Overcomeでも作品発表された。世界の人権や思想信条の問題に関する日本外交についての問題意識が示されたという評価も、本研究の意義の一つであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で海外出張が制限され、オンラインでは得られない聞き取り調査を実施することができず、業務量が増えたこと、ショート・フィルムの制作は初めての取り組みだったため技術的な作業過程に、想定していたより多くの時間を要したことなどから、分析が進まず、研究成果の公表を予定通りに進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はコロナウイルス感染症に伴う渡航制限が緩和されれば、海外での現地調査や学会参加を行いたい。海外渡航が難しい場合は、文献調査やオンラインでの情報収集や会合参加等を継続し、分析を進める。学会や研究会などでの口頭発表、日本語と英語での執筆、研究成果の国内外での発信に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、2020年に予定していたアメリカでの2度の調査研究を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度にはワシントンDCにおいて調査を行い、インドネシアで開催予定の国際的宗教自由の国際会議へ参加することを計画している。
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Remarks |
佐藤真千子 "Human Rights’ in U.S. Diplomacy: From Trump to Biden," SDGs Salone Talk. 静岡県立大学 2021年7月29日; 佐藤真千子「国際的信教の自由とCOVID19禍のマイノリティ」岩手県立大学2021年9月11日;佐藤真千子「追い込まれたリベラルな国際秩序―自由を守護するために」 藤枝市役所2021年12月24日.
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Research Products
(2 results)