2021 Fiscal Year Research-status Report
セキュリティ・ガヴァナンスの変容と平和構築の関係に関するフィリピンの事例研究
Project/Area Number |
20K01525
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
山根 健至 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (10522188)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィリピン / ミンダナオ紛争 / 平和構築 / セキュリティ・ガバナンス / 非国家主体 / フィリピン国軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、セキュリティ・ガヴァナンスが平和構築との関連でどのように変容するのかをフィリピンの紛争を事例に明らかにすることを目的とする。フィリピンの紛争地域では、国家の統治が十分に及ばない地域で治安機構が能力不足を補うため非国家主体と協働するセキュリティ・ガヴァナンスが形成されてきた。こうした状況下、和平プロセスが進み、自治政府の発足やMILFの武装解除と社会への再統合、および治安機構の改革・再編という平和構築の局面を迎えている。なかでも紛争地域の一部を実効支配してきた非国家主体のMILFの武装解除や国家の治安機構の再編は、国家(中央政府や関連機関)の能力の相対的向上をもたらすため、セキュリティ・ガヴァナンスの変容と帰趨に影響する要因を内包することが仮定される。こうした状況を踏まえて本研究では、国家の能力向上に関わる平和構築活動の進展状況および進展に影響を与える要因を把握・検討し、それらがセキュリティ・ガヴァナンスをどのように変容させるのかを明らかにする。 平和構築のプロセスでは、国軍と協働関係にあったMILFを段階的に武装解除するため、当該年度は、こうした移行期において協働関係がどのようなものになるのかを明らかにする研究を進めた。具体的には、この過程で治安維持に関与する新たな組織として国軍・警察・MILFから成る「合同平和安全部隊」が設立されることから、この組織の活動実態を分析の中心とし、他にどのような組織や制度が治安維持を担うのかを明らかにする研究を進めた。当該年度の研究によりセキュリティ・ガヴァナンスの変容過程を描写するのに必要な情報と知見を得ることができた。引き続き、平和構築の進展における新たな治安部隊の役割に焦点を当て調査を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題ではフィリピンでの現地調査が研究計画の主要部分を成すが、コロナ禍の影響により現地調査が実施できておらず、進捗はやや遅れている。他方で、日本国内での資料収集やインターネットを活用した使用収集などによる調査・研究を遂行し、ある程度進捗させることはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進にはフィリピンでの資料収集と聞き取り調査が不可欠であるため、コロナ禍の状況がどう推移するのかにより、研究の推進方策が変わってくる。 渡航が可能となった場合は速やかに渡航を計画・実施し、計画に沿って研究を遂行する。他方で、渡航が不可能な場合は、日本国内で入手可能な資料による分析を進めると同時に、オンラインでの聞き取り調査を模索し、推進することを対応策として検討している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で海外調査が全く実施できなかったため次年度使用額が生じた。これについては、次年度の海外調査(フィリピン)および国内調査、学会参加等の旅費に充当する予定である。
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[Book] 現代アジアをつかむ2022
Author(s)
山根健至(共著)、佐藤史郎、石坂晋哉(編著)
Total Pages
512
Publisher
明石書店
ISBN
978-4750353210
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