2020 Fiscal Year Research-status Report
Feasibility and Limits of Concert of World in the First Half of Interwar Period: Consequence of Great Power Politics in East Asia
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20K01527
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
大原 俊一郎 亜細亜大学, 法学部, 准教授 (00755861)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際協調 / 世界協調 / 国際秩序構築 / 両大戦の原因 / 自由民主主義の再検討 / 平和構築 / 国際安全保障 / 集団安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題「戦間前期国際秩序における世界協調の可能性と限界―東アジアをめぐる大国政治の帰結」は、18世紀から19世紀初頭にかけて、理想主義と現実主義の総合の結果として達成された「諸国家体系の成熟」とその具体的成果としての「ヨーロッパ協調」の観点から戦間期を再検討し、とりわけ戦間前期における国際システムの成熟(=世界協調)に真に寄与するはずであった構想や試み、そしてそれを阻害した諸要因を総合的に検討する。研究の重心は東アジアにあるが、最終的には世界秩序全体の相互連関を解明することを目指す。本年度の最大の目標は、2020年9月からのドイツ在外研究を遅滞なく実施し、マールブルク大学教授エッカルト・コンツェとの緊密な連携関係を築き、その指導の下にウィーン体制期、戦間前期にまつわる欧米の最新の研究動向をフォローしつつ、今後5年間にわたる研究課題実行の基礎を作り上げることであった。 具体的には、①コンツェ教授との緊密な連携関係を築き、②その指導の下にウィーン体制期および戦間前期についての欧米の最新の研究動向を把握した。さらに、③そうした最新の研究動向の先にある新たな研究の地平を切り開き、④その視点に基づいて、基本書・一次史料の読解を進めた。 研究内容としては、2014年に開催200周年を迎え、研究が飛躍的に発展しているウィーン会議研究と、2019年に開催100周年を迎え、同じく研究の発展が著しいパリ講和会議研究、そしてわが国でイギリス側の一次史料に基づく本格的な研究が始まったワシントン会議研究の三者の比較研究という形に収れんしつつある。むろん、これは会議だけに着目するものではなく、会議に至るプロセス、会議そのもの、そして会議の成果の衰退と崩壊に至る大きな視野を持ったうえでの会議比較研究となる。さらにこれは単なる講和会議比較研究にとどまらず、平和構築と国際秩序形成に関する基礎研究ともなろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍にもかかわらず、2020年9月より遅滞なくドイツ在外研究を実行し、さらに在外研究の中でマールブルク大学教授エッカルト・コンツェとの綿密な討議を2~3週に一度のペースで実施し、論点の咀嚼や理論枠組みの把握、基本書・史料の選定などを精力的に行っている。その際、これまでに自らが手掛けてきた研究が非常に役立ち、コンツェ教授との意思疎通をきわめてスムーズなものにしている。 コロナ禍のため、本年度内に予定されていた史料調査が実施できなくなったが、必要な公刊史料を漏れなく収集・読解し、同時に最新の確実な基本書・基本論文にも当たることができているため、研究が飛躍的に進展している。 コロナ禍による旅行制限のため、他のヨーロッパの主要な研究者との面会もままならない状況であるが、そうしたコロナ禍によるさまざまな制約を補って余りある研究の進展ぶりと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、ロックダウンの解除が進み次第、欧州各国への史料調査を実施し、さらなる研究の進展を図る一方、5月のCHIR-JAPAN(国際関係史学会)研究会における第一弾となるウィーン会議に関する研究報告を実施し、日本の研究者との討議を行う。 9月に帰国して以降は、ウィーン会議についての研究成果をまとめ、第一弾の論文発表を行う予定である。また、これと並行して、ウィーン会議研究で得られた知見を元に、パリ講和会議・ワシントン会議の基本書・基本論文と史料の読解を進め、これまでにない新たな視座を切り開いていく。その際、当面はパリ講和会議の基本書と史料の読解、またはウィーン会議とパリ講和会議の比較研究に関する基本書の読解が中心となるが、その先に確実にワシントン会議を視野に入れつつ検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、2020年3月より本格化したコロナ禍により、2020年9月のドイツ在外研究開始以降、予定していた海外での史料収集がすべて中止となった。具体的には、2020年9月にドイツに入国し、2020年11月より2021年5月現在においてもロックダウンが続き、旅行制限がかけられている。そのため、当初本年度に予定していた旅費がすべて未使用となる結果となった。また、ドイツ入国後、ドイツ国外への渡航が可能なビザがおりたのは、2021年4月になってからであった。 次年度は、ヨーロッパにおいてコロナワクチン接種が進み、2021年5月初旬の現在において、イギリスにおいては、ロンドンの公文書館(PRO)が開館し、イギリス・フランス・オーストリアにおけるロックダウンが徐々に緩和されてきている。ドイツにおいても、5月初旬に第一回目のワクチン接種率が30%を超え、顕著な成果の出る40%にあと約2週間程度で達する予定である。このため、5月下旬には各種の制限緩和措置が本格化し、ドイツ国内・国外での史料収集にも道が開けてくる。 また、各種制限措置の緩和は、コロナワクチン接種とも関連しているため、早期に2回の接種を実施し、オーストリア・イギリスなどでの史料収集に備える予定である。 各種の準備が整う6月下旬以降にオーストリア・イギリスなどでの史料収集を実施し、さらに研究課題を進め、また科研費(旅費)の使用も確実に進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)